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東京暮色のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
3.3
愛人と駆け落ちした母親、残された父と二人の娘、それぞれの生き方を通して、家族(の人生)の悲哀を描いたヒューマンドラマ。
戦後の小津安二郎監督作品の中で最も暗い雰囲気が際立つ異色作。(1957)

~主要人物~
・定年を過ぎ今は銀行の監査役を務める杉山周吉(笠智衆)
・長女の孝子(原節子):結婚したが、夫とうまくいかず実家に舞い戻っている。
・次女の明子(有馬稲子):父親に反発し半分非行少女のようになり、優柔不断な大学生の木村の子を妊娠する。母親の穢れた血だけが自分の体を流れているのではないかと孤独感に苛まれる。
・男を作り黙って家を出た妻の喜久子(山田五十鈴 ):今は麻雀荘を営む女主人で、別な男(中村伸郎)がいる。

「いったい私、誰の子なの!」

「これは若い女の子の無軌道ぶりを描いた作品だと言われるが、ぼくはむしろ笠さんの人生ー妻に逃げられた男がどう暮らしてゆくかという、古い世代の方に中心をおいて作ったんです」と小津監督は後に語っているが、そのようには描かれていない。
脚本を担当した野田高梧との根本的な対立があったと言われており、意図したとおりにならなかったのではないか。
この作品の白眉は、山田五十鈴演じる別れた妻と娘との再度の別れのシーン。上野駅でのこのシーンだけでもこの作品は見る価値がある。
なお、ラストの原節子の言動は間違ってはいないが、今の感覚ではやや古風な感じがしないでもない。
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