垂直落下式サミング

ツーフィンガー鷹の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ツーフィンガー鷹(1979年製作の映画)
4.1
幼年向けコミック紙に連載されている漫画のような題名だが、実は凶器使用アリ血飛沫Oh Yeah!のサイコで奇っ怪なスラッシャー映画。
今回のユンピョウは、武芸に秀でていないどころか意気地無しで弱虫の洗濯屋の役で、客に舐められ稼業の集金すらままならないような男を演じている。そんな彼が鈴を持っているからというワケわかんない理由で白虎というザ・グレート・カブキ似の危険な殺人鬼に恨みをかってしまう。昼夜を問わず襲い来るカブキからあの手この手で逃げ仰せるのだが、何度逃げても恐ろしい怪人から執拗に狙われ続ける恐怖から、いつにも増して仕事も手に付かなくなってしまう。そこで護身のために武芸を身に付けようと兄貴分の口利きで武術の達人に弟子入りしカンフーを学ぼうとするのだが、それでも全然強くなることができない。どうなるユンピョウ?!
本筋は牧歌的なコテコテの香港映画ギャグだが、白虎の強靭な握撃によって腹を裂かれる男と定食屋で鳥の丸焼きの腹が切り開かれるシーンをカットで繋げるなど悪趣味なモンタージュからもわかるように、陰惨な場面から途端に話が明るくなり、突如としてギャクパートに戦慄がフレームインするため常に気が抜けない。
白虎はジェイソンとかレザーフェイスみたいな怪人として描かれているので、コイツだけコメディ映画に違う世界観のキャラが迷い混んでしまっているような感じがする。あのメイクが暗闇から浮かび上がる場面は実際かなり怖い。あからさまにギャグとショッカーの内訳がおかしいのだ。
さらに空とぶギロチンを模したお椀使いが登場するが、投げたお椀は紐や鎖をつけていないのに必ず手元に戻ってくるため、かなりの手練れと思われる。そいつを相手取るのは師匠を演じるクワン・タッヘン!不勉強にも彼の主演作を拝見したことはないが、白黒時代から香港映画に貢献してきたレジェンドカンフーだという。最後まで古老師としてどっしり構える貫禄もさることながら、回転によって木板を削りとる鋭いギロチンをものともしない勇猛さもみせる!当時すでに高齢でありながらアクションに説得力があり、ストーリー上でも見せ場の多い役どころを与えられるなど、かなりの年配者リスペクトがはらわれているようだ。
友人を殺された怒りのユンピョウが洗濯業によって編み出したツーフィンガー殺法によって繰り出す布や服を用いた奥義の数々はかなり独創的。袖縛り。奥衿破り。金的狙い下段パンチ。髪搾り。ゴシゴシ攻撃。どれも前半でみせた洗濯屋さんという特性を活かした攻撃である。
『ベストキッド』のように、家事や雑務も人並み以上に繰り返しこなせば強くなれるんじゃないかと錯覚させてくれるので、お手伝いを嫌がる子供にみせたら張り切ってくれるかもしれない。