dita

グブラのditaのレビュー・感想・評価

グブラ(2005年製作の映画)
4.0
@シネマート心斎橋 ~ヤスミン・アフマド特集~   

ようやくオーキッド三部作を全て観られた。『ムクシン』の前に観たかった気もするけど、ムクシンのエピソードが蘇ってじーんとしたのでこの順番でよかった。でもこれ観た後はもう1回ムクシン観たくなるね…細い目も観たくなるね…。

オーキッドパートは、ヤムさんがホッとして泣いたところでつられて泣き、写真のところで当然泣き、ラストは言わずもがな。オーキッドがずっと抱えてきた思い、腰の下まで伸ばした髪、あの夫と結婚したことは過去に対する諦めだったのだろうかと思うと切なくなるけど、オーキッドの性格ならきちんと今に向き合った上で結婚したんだろうなとも思った。だから許せなかったんだよね、わかるよ…。

もう一つのマレーシアの厳しい現実の比重が大きかったので少し面食らったけど、宗教がテーマの作品を観た時にわたしがいつも思う「信仰はその人の核であるべきで、全てになってしまってはいけない」が描かれている気がして、わたしの中にヤスミンの優しさと同じ部分があると思えてなんだか嬉しかった。聖職者である前に人である、わかるよ…。

ジェイソンの両親のアレは女性だからこそ描けるよなと思いながら観ていて、お母さんそこで握り返したらダメ…あいつはこれからも変わらんよ…という気持ちと、やっぱりそうしちゃうよね…信じたいよね…という思いが交差して複雑な気持ちになった。でもわかるよ…。


長編を5本観て思ったことは、ヤスミンは優しさの人であるし、人を正しく導ける人だと思うけど、「こうしなさい」が全くないのが凄いなと改めて思った。無理に導こうとはしないし、誰の立場も誰の考えも決して否定しない。様々な家族、夫婦、環境、忘れられない思いと変われないこと、祈りと行動、優しさと厳しさを全部受け止めた上での全肯定。わたしもこんな風に世界を見つめたいと心から思うし、彼女の優しさと可愛さと茶目っ気に心から憧れている。
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