Mana

アレクサンドリアのManaのレビュー・感想・評価

アレクサンドリア(2009年製作の映画)
4.0
取り扱ってるテーマが私好みなので、純粋に映画としての評価に若干甘めに星つけてるかも
でも、とても良かったと思う

最近、アレクシアスをきっかけにビザンツ帝国の本を読んでるので映画も探してみたら全然なくてびっくりした。ビザンツ帝国の映画は本当に全然ない。
需要がないのかな。オスマン帝国ものはトルコが作るし、ローマ帝国は欧米でたくさん作られてる印象。ビザンツ帝国の後継っていないイメージだし、作る人がいないのかとがっかり。

本作は東西ローマ帝国の分裂時代だから一応ビザンツ帝国の定義にも引っかかるみたいだけど、時代的にも地理的にもビザンツ要素は皆無。長官がコンスタンティノープルで洗礼を受けたって言ってるところくらいかな?
でも、それはそれとして映画はとても面白かった。キリスト教が帝国で公認されてからしばらく経って、それまでの異教徒知識人たちが追いやられていく時代。正直、これを見るとキリスト教徒の印象は最悪だけど、ただキリスト教が悪いというより、人間がどうしようもないような気もする。異教徒知識人たちも決して清廉潔白ではないし。

しかし、異教徒知識人たちの知識レベルとキリスト教徒の無知さを見ると悲しくなるのは事実。せっかくの人類の叡智がこうやって無に却ってしまうのかと、情けなくなる。
キリスト教の何が問題かって、疑問や疑いを持たないことなのかなと思った。個人的に面白かったのは、ヒュパティアたちも神の存在は信じてるってところ。どこまで純粋に信仰してるかは別として、この世界も物理法則も神が作ったと思っている。それを、どのような原理になっているのかを解き明かそうとしているから、科学と信仰は矛盾しない。テッド・チャンのオムファロスの世界みたい。

同じように神を信仰していても、どうなっているんだろうという疑問や疑いを持つヒュパティアと、神や聖書の言葉をただ信じるだけというキリスト教徒の違いかなと思った。 
Mana

Mana