大島育宙

呪怨の大島育宙のレビュー・感想・評価

呪怨(1999年製作の映画)
4.5
何度見ても完璧な幕開け。白昼が怖いのが偉業。

シーンごとに振りが丁寧でなめらかで、
その流麗さに惚れ惚れする。

家族でない者がその家に取り残される理由をスムーズに作ったり、後で嫌なタイミングで鳴る携帯電話を後ろ手に隠したまま栗山千明に歩かせたり、恐怖と恐怖の数珠繋ぎの仕方が自然で作り込まれている。

ほとんどのシーンは視覚よりも聴覚による恐怖の引き出しの大喜利だ、と近年のホラー映像と比較するとよくわかる。ラジオを聴かせたりするのは今見るとややわざとらしいが、「違和感のある音を聞かせる」工夫の連打の一環として納得がいく。

あの「あ"あ"あ"あ"」という発明音と階段上から迫ってくる伽耶子に至るまで、細かい音のトラブルが積み重ねられる。敏雄の声、猫の声、ミスリードとしての柑菜のちょっとだけ大きくて長い「あーー」という叫び声など。一つ一つは勘違いのような不穏描写を積み重ねて「気づいた時にはもう逃れられない距離・サイズに成長している恐怖」という手堅さ。映像も音もキレイになってしまった今だからって必ずしもこの再現ができないとは思えない。学べるところは多くある。