ジャイロ

生きてる死骸のジャイロのレビュー・感想・評価

生きてる死骸(1941年製作の映画)
3.7
2021年の消える死体の4本目、今年最後の作品はこちら

『生きてる死骸』

まず最初に言わせてください。この邦題から察するに、死体、消えないかもしれません。ただし、この映画の売り文句がこれ

「生きているはずがない

なぜなら

私がこの手で殺したのだから!!」

うん。この企画の主旨と概ね合ってますね。よって合格です。しかも本作は『サイコ』『狩人の夜』の原点ともいえる古典的スリラーなんですって。これはもう期待で胸が高まります。


そのクレジットタイトルの雰囲気や良し

そして出てくるわけです

眉間のシワが険しい

彼女がアイダ・ルピノですね

人はいろんなものを背負って生きている。その重荷から逃げ出す人もいれば、逃げずに向き合う人もいる。この歳になるとそれがわかる。いろんな人を見てきたからね。生きるってたいへんだよね。わかる。

一生懸命生きているすべての人が報われるとは限らないのが現実

人はいとも簡単に道に迷う

暗闇の荒野を一人孤独にさ迷う

どうか迷える子羊に一筋の救いの光を

蛇のように狡猾な男に付きまとわれる様をじわりじわりと味わわせてくれます。ああ、アイダ・ルピノの眉間のシワがどんどん深くなっていく…

面白いなあ

さてそれでは死体の評価にいってみましょう


評価はデフォ1点+以下それぞれ1点満点で

①死体の消し方に趣向を凝らしているか
手間暇はかけてある。でもほぼワンシチュエーションだから、なんとなく察しがつきます。しかしそれを効果的に演出に使ってくる。あそこだ!!から焦らしに焦らしてとうとう最後まで焦らし切る。なるほどね。上手い。あの状況を考えるといろいろと納得のいく消し方です。人間性だけは消しきれなかったというのがまた良いですね。
[0.7]


②背景
本作、妹たちの方が姉さんたちなんじゃないの?ってぐらいアイダ・ルピノが若い。当時23歳のアイダ・ルピノのこの設定に違和感はありました。でも、ピンと伸ばした背筋、仮面のような表情、凛として毅然とした態度、人物背景がしっかりとしていて、なかなかどうして、しっかりもののお姉さん役を上手くこなしていました。

このアイダ・ルピノというお方、ハードボイルド映画のヒロイン役で強い印象を残し、そのタフなイメージから、あのベティ・デイヴィスと比べられることも多かったと言います。また、女流映画監督の先駆けでもあり、48年間のキャリアの中で59本の映画に出演し、7本の監督を務めたほかテレビシリーズでもゲスト出演と監督を多く務めたという。すごいお方なんですね。
[0.7]


③意外性
えーっと死体の意外性は…ありませんでした。殺害方法も納得の方法。この映画、いろいろと伏線が張ってあって、それを細かに回収していく感じなので、悉く納得の展開をしてくれるわけです。丁寧なんだけど、丁寧すぎて意外性が無い。もっと冒険してくれても良かったかな?そんな感じでした。でもちゃんと死体は消えてくれたので、そこんところはホッとしました。
[0.3]


④美しさ
死体の美しさは確認できませんでした。だって出てこないんだもの。アイダ・ルピノは劇中ずっと眉間にシワを寄せているのですが、最後の最後に微かに口元が綻びます。観てるこっちまで安堵で胸を撫で下ろすような、そんな爽やかな微笑みでした。彼女の笑顔に
[1.0]



今年の消える死体の映画祭はここまでです。実はもうネタ切れしてます。来年は実現できるかな…

このレビューをお読みになった方で、映画をご覧になった際に死体が消えた方がいらっしゃいましたら、私までご一報いたただけますと幸いです。
m(._.)m