雨丘もびり

ゴールデンボーイの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
5.0
【Following様の鑑賞リストから選んで観てみた】
映像美に息をのむ。
金色の白日、正しい明かりを浴びてなお、迷いなく突き進む嘘。
.....しびれる。完成度高~い(@O@)。
   
高校の優等生トッドは、授業で聞いたナチスのユダヤ人迫害に、強く興味を惹かれる。
近所に隠棲する老人デンカーの正体を、元ナチス高官だと突き止めたトッドは、警察に告発すると強迫し、従軍時代の話を語らせる。
言いなりになるデンカー老。しかし、周到にトッドの秘密を握り返し、力関係を逆転させて本性を表わす。
社会上の生殺与奪を人質に、抜き差しならない状況に追い込み合う二人。
凶暴さを開花させるトッド、狡猾さを取り戻すデンカー。
本気にさせた代償、逃がさない、止めさせない、離さない。
すさまじい緊張関係が育む、イビツな、でも強固な友情の物語。
   
青年が負の遺産に興味を持つ、その動機が"からっぽ"。いい説得力の持たせ方だな。
打算なき純粋な知的好奇心、無邪気な加虐性を持つ主人公トッド。
きょとんとした無表情で演じるブラッド=レンフローがとにかく見事(グリーンマイルのクズ看守の系譜かな)。
さらに、その先の成長過程まで顔つきひとつで感じさせる。。。すごい俳優だわ(脱帽)。
    
老獪なデンカー老を演じるイアン=マッケランの、力無い体つきから立ちのぼる気炎ったらまァステキっ(惚)。
陰湿で不愉快なスクールカウンセラーのフレンチさん、その正体は、恐竜バカのDr.ロス=ゲラー(違w/でも、言われてもわからないカモフラっぷり)。
素晴らしい俳優たちの演技に唸りっぱなし。見どころに溢れた映画。
   
・・・私の祖父はシベリア経験者。
帰国してから戦地の話をまくしたてるも、周りが理解してくれないとわかり、やがて口をつぐんでしまったそう。
経験者でない者には寄り添えない心情、手を差し伸べられない彼方の記憶。
不純な性根の持ち主でも「眠るまでここに居てくれないか?」と頼める同輩ができて、デンカー老は幸せだったかもしれない。
   
トッドの妄想描写は手ぬるく感じる(滝のような寝汗かくほどかな?)。
とはいえ、人物たちの細やかな心情変化、それを互いに見逃さずナイフを突き立てんと睨み合う緊迫感は、ちょっと他では味わえないスリル。
面白かった・・・観て良かったです。
大好き!
   
ちゃんと書けてないハーケンクロイツって、どこでも見かける悪戯書き。
うかつに踏み込む馬鹿は、身の危険を自覚せず消される。
痛快に思いつつ、良い教訓としましょう。



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