maya

戦国無頼のmayaのレビュー・感想・評価

戦国無頼(1952年製作の映画)
4.0
予定調和のクソメロドラマなのに、三國連太郎と山口淑子が良すぎる...。三國の「俺は犬だ、犬は犬らしく死んでやる」っていう台詞がさ...優しく彼を見守ってた志村喬とセットで本当切ないんだ...
三國連太郎は、太平洋戦争で戦争に行きたくなくて逃げ回ったあげく、母親に騙されて呼び戻されてそのまま徴兵された、けれど中国で病気になって、そのまま死体と間違われて火葬場で焼かれて生き返って帰国した、という壮絶なエピソードがあるんだけど、それを踏まえて胸が苦しくなった。本作は「そういう小狡い男は男じゃないから無様に死ぬ」というオチだったけど、途中、そんなしょうもなく足掻く彼に、志村喬の愛情と哀れみのこもった目線が暖かく向けられていたのが、結末と合わせるとすごく切ない。武士道的な価値観から見れば彼の生き方はしょうもないだろうけれど、生きることに真っ直ぐで、上司だの面子だのから逃げ回りながら、自分を大事にする彼に、特に今の若者なら1番共感するんじゃないだろうか。その彼が、よってたかって「日本的な共同体意識に殉じる人々」に見下ろされながら、「自分は犬だ」と自虐しながら死ぬ。志村喬の目線があるから、比較して、すごく悲しくなってしまった。いや、そのノリ、めっちゃ暴力的じゃん...
生き残る価値のある男じゃなかろうと、無様だろうと、ただ生きるために必死で逃げたり、ズルして出世したり、でも本当に欲しいものは手に入らなくて、心に空いた穴が膿み始める。三國連太郎のあのぽっかり穴が空いたみたいな目線が大好きなんだけど、そういう切なさがあるんだよな...
maya

maya