よしまる

帰らざる日々のよしまるのレビュー・感想・評価

帰らざる日々(1978年製作の映画)
4.2
 邦画は基本的に苦手で積極的に観ることはないのだけれど、それでも70年代となれば話は別。なぜか惹かれてしまう。
 1978年度のキネ旬ランキングで5位、読者選出では1位の作品をようやく初鑑賞。
 にしてもmark数100台って少なくてビックリ。

 タイトルはアリスの有名曲から。子供の頃よりアリスが大好きで、初コンサートがアリスの解散ツアーの京都公演。両親に連れてもらった笑
(訂正:解散ではなくて78年のアルバム化された際のツアーでした。当時小学生w)

 藤田敏八監督は大好きとは言えないままでも観ている本数は多く、本作は自分の中ではかなり高得点になった。

 時代の寵児ともいうべき永島敏行、江藤潤の2人。
 永島のどこにでもいる鬱屈した若者像は、何だかわかんないけどウズウズモヤモヤした青春時代を過ごした人にはきっと共感しかないだろう。モテすぎちゃうん?と思わなくもないけれど、そのちょっと羨ましい感じも含めてボクは好きだ笑

 同級生の女の子、竹田かほりに好かれていて、でもウエイトレスの浅野真弓が好き。惚れられた彼女とはとりあえずヤるけれどほんとにシタイのは歳上だったり水商売だったり、って、この時代の青春デフォルト設定。

 そして一方の江藤はちょっと破天荒ながら今でいう勝ち組ふうの好青年。恋敵であり良きライバルである二人の関係がとにかく熱い。そして訪れる悲劇、月日が流れても更に覆いかぶさるつらい現実。

 原作の中岡京平「夏の栄光」がたぶん面白いのだろう。ヒット曲にあやかって曲名をタイトルに映画化というのは現在もよく使われる手法だけれど、本作に関しては歌詞と物語の内容はまったく合っていない。
 むしろ挿入歌の「つむじ風」のほうが合っている(ただし小松方正と手を繋いで野原を駆ける夢を見ながら夢精してるのは意味がわかんなかったんだけどあれナンダ?笑)。

 そもそも「帰らざる日々」は荒木一郎のパクリとされていて、でもそれはそれとしてどちらも素晴らしい楽曲。

 荒木のほうは愛猫の死を悼む曲、アリスは自殺した彼女を悼む曲。どっちにしてもこの映画には関連性はなく、なのにbye byeという歌詞と叙情的なサウンドが哀愁たっぷりに響くエンディングの前にはどうでも良くなってしまう。それはそれで困ったもんだけれど、原作をあえてこのタイトルにすることで感じられるものがあったのだからまあ良いのだろう。

 暑い夏。女の子の前で揺れる若者の焦りや葛藤、親友との友情、そうした一瞬の輝きを捉えた映画は数あれど、こんな名作があったなんて知らなかった。観れて良かった。