李相日監督が、「青~chong~」を映画学校卒業制作でPFF4冠をとり、スカラシップで長編をとったのがこの作品。
「悪人」「怒り」と続く今や邦画界の若き巨匠の存在感になりつつあるが、まだこの作品では粗さと荒々しさが同居していて、観客を楽しませる視点がたりず、映画としての完成度は高くない。
追い詰まった5人の群像劇ではあるが、家にも学校にもなじめない17歳の少年、はぐれもののヤクザ(光石研)、アルコール依存のタクシ-運転手(村上淳)、援交でつかまる女子高生(前田綾花)、家庭崩壊でノイローゼ気味の主婦(麻生祐未)が、
それぞれ緊迫感を抱えながら、ドツボ状況にはまっていき、沸点を迎えるという構成は洋画だと「マグノリア」や「クラッシュ」が傑作だが、そこまでのカタルシスには至らない。
ただ、この頃から徹底して役者を追い詰める完璧主義的演出は徹底していたようで、役者のギラリとした生の感情を引き出すことには成功している。
そして今、李相日監督が、「怒り」で、どこに到達しているのかを今、楽しみにしている。