えそじま

国境の町のえそじまのレビュー・感想・評価

国境の町(1933年製作の映画)
4.8
帝政ロシアから第一次大戦、革命と激動の時代に翻弄される労働者を描いた、戦争=大量生産の図式。郊外の町に暮らす無垢な青年たちは、"偉大さ"が帝国主義の思想にのみ基づく場合の捏造された美徳「大義」のために死に、殺し、友情は引き裂かれ、狡猾な資本家はそれを利用し、生命はただの数字で、計算には流された血も涙も存在していない。

素早く交互にカットバックされる靴用ミシンと機関銃が一定のリズムに沿って同化し、そのまま資本家の利益をあらわす大量の軍靴と死体の山の対比に繋がっていくという発想が天才的だった。

しかもこの内容で喜劇の形式だ。戦争の不毛を告発する政治性が、ルネ・クレールの機械仕掛けにも似た映像そのものの持つ音楽的イメージによって隠され、どこか意義深い哀愁を秘めた純粋な映画を確立しているような印象。つまり、路上のワルツであり、古い軍の行進曲であり、塹壕にいる兵士の歌である。
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