むっしゅたいやき

国境の町のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

国境の町(1933年製作の映画)
4.0
資本家、アジテーター、そして靴職人。
ボリス・バルネット。
帝政ロシアから第一次大戦を経て社会主義化して行く国家と、国体が変わろうとも前線で戦い続け、消費されて行く兵士の姿を描いた作品である。

本作は巷間に溢れる、戦時下の“敵味方間の友愛”を描いた作品ではなく、寧ろ資本家や革命家に搾取され続ける“哀れな労働者”を描いた悲喜劇と見るべきであろう。
そう云う意味では、ロシア革命を起こしたボリシェヴィキへの讃与作品であると見做す事も出来、バルネットにしては少々政治色の強い作品となっている。

本作は一編を通し特定の主人公が居ない劇であり、各々のエピソードの主役がバトンタッチして行く形で紡がれる。
具体的にはカドキンから息子のセミョンへ、次に兄ニコライ、親方の娘マーニカ、ドイツ兵ミュラー、再度カドキン、ニコライとなるが、こう言った形式の通例として各々の人物の後日談が割愛、又は極端に省略されており、消化不良な感は否めない。
またテンポが良過ぎてエピソード毎の余韻も無い為、全体的に浅薄な印象を受ける点が気に掛かるところではある。
とは言えソフトフォーカスを多用した画作りは流石の一言であり、視線誘導をされる為煩雑なシーンでも観ていて混乱する事は無い。

喜劇『帽子箱を~』から爽やかな名作『青い青い海』へ。
効果音を使用しシリアスなプロットへ喜劇的エッセンスを上手く注入している点にも注目したい、バルネット過渡期の作品である。
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