まりぃくりすてぃ

わが生涯のかゞやける日のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

わが生涯のかゞやける日(1948年製作の映画)
4.7
画もシナリオも流麗で、戦争への怨念に濡れている。昭和23年時点でのこの仕上げ! 信じられない。
ジーン・ハーローばりの美貌の山口淑子さん、同じく日本人離れした怪人的な滝沢修さん、過不足ないイケメン度の若々しい森雅之さんをはじめとした美男美女たちを贅沢に駒として使いきり、同時期のフランス映画群に表現力と洗練度でたぶん全然負けてない。
サングラスに映り込んだダブル山口さん、という最上センス!
滝沢さんの死にっぷりと、直後の山口さんの現れ方はまるで正統派ホラー。

でも、ラスト数分、せっかくのキス、せっかくの“輝けるリスタート”なのに、肝腎なところで「俳優」よりも「台詞」の方が主役になっちゃった。そこだけ喋りすぎの新藤節(ぶし)が鮮やかすぎて、美キス等々のアップショットに集中できない気がした私。
悪役以外の各人物がそこまでほとんど全部新藤兼人さんの代弁者だったことは、もちろん結構なのだが、「戦争なんて何遍繰り返したっていいじゃん」と思ってる輩の心を入れ替えさせるほどの力を持つ作品ですか? もう少し静かに行ってほしかったラストということ。