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暴力教室のkissenger800のレビュー・感想・評価

暴力教室(1955年製作の映画)
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70年弱前の作品、というフィルタ越しに見てまっさきに思うのは、映画という表現形態の(文学や絵画、音楽、演劇etc.,に比べたときの)歴史の浅さ、です。
物語に核は在るのに、語り口のつたなさのせいで70年後の観客にはどうにもこうにもこれが何の話なのかが伝わりづらい。十代の少年を演じるシドニー・ポワチエ(28歳)、ヴィック・モロー(26歳)の存在感もテーマを見失わせる「ノイズ」になっちまって……まで考えが及ぶと、逆に作品のテーマ-混沌とする戦後社会で教育が果たし得る役割-はそこまで大事っすか? みたいな感想になるというおかしみ。

合衆国の教育現場の荒廃を海外にしらしめることになるのでは、それは民主主義のネガティブキャンペーンにすらなりかねないのでは云々、公開前に真顔で案じられたエピソードは70年後のわれわれには現実味に乏しいですが、輸入公開されるアメリカ映画の作品チョイス決定権が日本になかった当時「好ましくなかった」本作が日本でも公開されたのはMGMのゴリ押しのせい。てな歴史を知ると、そういう被占領時代を経て今日がある、過去と現在の連続性に面白がれます。

……というのはまあ嘘で(嘘かい)彼の業績を知らないひとでもここのシドニー・ポワチエの、群を抜くオーラに気付かずにはいられないレベルでして、それ見るだけでも満足できると思うのよ。
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