kuu

波止場のkuuのレビュー・感想・評価

波止場(1954年製作の映画)
3.9
『波止場』
原題 On the Waterfront.
製作年 1954年。上映時間 108分。
エリア・カザン監督とマーロン・ブランドが再タッグを組み、1955年・第27回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞など8部門に輝いた社会派ドラマ。
後に『北北西に進路を取れ』などに出演するエバ・マリー・セイントがイディを演じ、映画初出演にしてアカデミー助演女優賞を受賞した。

元ボクサーの青年テリーは、現在はギャングのジョニーが支配するニューヨークの波止場で働いている。
ある日、テリーと兄チャーリーはジョニーに命じられ、殺人事件に関わってしまう。
やがて被害者の妹イディと知り合ったテリーは、兄の死の真相を追求しようとする彼女に心惹かれていく。
イディに感化され、自らの信念に基づいて生きることに目覚めるテリーだったが。。。

今作品は、港湾労働組合の腐敗と、マフィアのボスに立ち向かう一人の男の勇気を描いてます。
しばしば史上最高の映画のひとつに挙げられ、感情を揺さぶるハンマーのようなガッンとした力を持つ。
今作品は、ニューヨークの街並みを背景に、ニュージャージー州ホーボーケンの波止場で撮影された臨場感あふれる舞台設定で、エキストラのほとんどは、実際にその港で働く港湾労働者やったとか。カラーでなく白黒のフィルムを使うことで、よりドラマチックな効果を上げてます。
今作品は、エリア・カザンの個人的な政治的主張であり、カザンはちょうど下院非米国活動委員会で、共産党に所属していた元同僚の名前を挙げて証言したところだった。
その結果、彼は映画界のほとんどから排斥されることになり、今作品は、自分の証言を正当化するための彼の個人的な使命となった。
彼は、テリーを自分の分身として見ていた節が感じられる。
あるシーンで、組合のボスが
『お前は俺たちを裏切ったな、テリー』
と叫ぶと、ブランドは云い返した。
『私は今、ここに立っています。ずっと自分を責めていたんだ。知らなかったんだ』と。
これは、カザンが批評家たちの罵詈雑言に対して云った反骨の言葉ととれなくはない。
このため、この映画はハリウッドのエリートたちに酷評され、カザンは裏切り者として悪者にされた。
1988年の自伝では、この映画がアカデミー賞を8部門受賞した後の心境を『あの夜は復讐を味わい、それを楽しんでいた』と書いている。
『今作品は私自身の物語だ。あの映画に取り組む毎日、私は自分の立ち位置を世界に伝え、批評家たちには「勝手にしやがれ」と云っていた』。
政治的な意図はさてこき、これは巧みと云わざる得ない映画作りでした。
物語は、善と悪の古典的な闘争であり、一人の男が乗り越えられない困難と確実な死をものともせず、自分の信念を貫くちゅう、身を切るような力を持ってました。
この映画には、映画の中で最も印象的で引用されるシーンの1つがあります。
ブランドは、自分を売り渡し、マフィアが彼の対戦相手にかけた賭けに勝てるように彼を潜らせた兄を非難する際に、今では有名な
『お前はわかっちゃいない! 俺はもっと上品な男になれたかもしれない。 挑戦者になれたかもしれない。 今みたいなクズにならずにすんだかもしれないんだ。』ちゅう台詞がある。
この映画のエンディングは、映画製作の歴史において最も勝利的なものの1つかな。
演技は軒並み超匠やと素人目にはうつった。
ブランドの演技は、間違いなく史上最も忘れがたいものの一つかや。
彼のキャラは、単純な男でありながら並外れた勇気を持ち、驚くほど魅力的なヒーローに仕上がっています。
彼が表現した苦悩は、深く心に残るものやったし、カール・マルデンは、組合員とともに立ち上がり、汚職に反対するよう激励する反抗的な神父を演じて衝撃を与え、リー・J・コッブは、権力を維持するためには手段を選ばない、悪徳で狂信的な組合のボス、ジョニー・フレンドリーを見事に演じてましま。
テリーの兄で、ジョニー・フレンドリーの手先でしかない賢い弟を演じたロッド・スタイガーもまたよかったし、エバ・マリー・セイントは、殺された港湾労働者の勇気ある妹役で説得力を発揮した。
若き日のフレッド・グウィンとマーティン・バルサムも脇役として出演している。
今作品は、大好きな映画の一つです。
もちろん、クラシック映画ファンに愛されてる作品だし、云い表せないほど迫力あった、善き作品です。
kuu

kuu