アーリー

アメリカン・ギャングスターのアーリーのレビュー・感想・評価

3.8
2023.9.6

ギャングとそれを追う麻薬捜査官の実話。
1960年代後半から70年代前半が描かれているためか、なんとなく「ブラックレイン」のような古い街並みの感じと映像の質感がある。

誰も思いつかなかった麻薬密売システムを実行してハーレムを裏から支配した男。とにかく目立たないように生き、ある種の礼儀正しさみたいなものも感じる。と思いきや白昼堂々ととある男の頭を銃でぶち抜いたりする。変な人物。
デンゼル・ワシントンのイメージもあってかカリスマ性を感じさせるが、どことなく地味な印象もある。なんか凄いチグハグなキャラ。

警察が死ぬほど腐敗しており、ギャングに賄賂を送ったり、麻薬を薄めて売り捌いたりしてる。その代表格のキャラとしてジョシュ・ブローリンを配役。対象的に正義というのが自分の中ではっきりしてる警察役にラッセル・クロウ。ギャング対警察の話ではあるけど、最終的には腐敗してる警察たちに矛先が向く。ジョシュ・ブローリンの役はまぁいいとして、メインとして描きたいのがラッセル・クロウなのかデンゼル・ワシントンどちらなのかがわからない。たぶんタイトル的にも後者の方やねんけど、いかんせん地味やからなんとも盛り上がらないというか。ギャング感が全然ない。それはわざと目立たない生活をしていたからで、今まで見たことないギャング像ではあるけど、やっぱり強烈なイメージがないぶん印象に残らない。悪の矜持みたいなものを感じない。最後クロウに捕まえられたデンゼル・ワシントンが悪徳警察官の情報を流すことで、なんやかんやあって刑期が少なくなり、刑務所を出た。そういうギャングスターらしくないラストの印象がそのまま今作の印象になってる。格好良さがないし、人を不幸にした報いを受けたわけでもない。

警察の腐敗がもうそもそもやばい。日本も暴力団は必要悪として敢えて残してるとかなんとか聞いたことあるけど、なんかもう根深すぎて考えたくない。警察も人間。人がやってる以上誘惑には逆らえへん時もあるやろうし、責められへん部分はある。ギャングにしても生まれた時から劣悪な環境で、生きていくためにはその世界に入るしかなかったとか言われたらちょっと可哀想な気もする。麻薬ビジネスが成立するのも、買う奴がいるから売る奴が出てくる訳で、じゃあなんで買うのってなったらそれは色んな人がそれぞれの生活で苦しんでいるからで、とかなんとか考え出したらキリがない。
 腐敗した界隈の中で己の正義を一本しっかり持ってるラッセル・クロウのキャラが今思えば1番かっこよかった。ただ奥さんと子供の親権を争ってる時に、色んな女性を連れ込んでたりする。まぁ離婚してるからいいんやけどな。自分の弁護士と寝てたりするし。依頼人と寝る弁護士も弁護士やけど。これも実話なんかな。

2時間半あるけど、飽きない作りでつるっと観れる。あとはやっぱり主演二人の演技力。フィクションとしてのギャングを求めてしまったからちょっと拍子抜けした部分はあるけど、ノン・フィクションだからこそ伝わる恐怖とか、この世界のやるせなさを感じた。
アーリー

アーリー