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大阪の宿のkossのレビュー・感想・評価

大阪の宿(1954年製作の映画)
4.1
細部に神が宿るように、完璧な構図とカット割りが怒涛のように展開する。五所平之助の力業が神々しく眼前する。

オープニングの路面電車と淀屋橋駅が鮮やかに大阪の街へ導く。通り、煙突、ビル、川、河原、大阪城、ロケーションも完璧である。川沿いの宿屋の玄関から中に上がれば、階段、上り下り、二階、部屋、窓枠、帳場、セットも計算し尽くされている。

物語はダークな小市民映画。上司を殴った左遷の大阪。そこには小市民の悲哀を越えたダークな人生がある。姑息な策略の会社人間、金に困る娘、息子に会えない母、腐れ縁の男から離れられない女。そんなダークな小市民劇は死人の肩に乗るヒヨコや屑屋の工場の上を走る電車で表象される。

突然に飛ぶ飛行機がダークな淀みを切り裂く。ラストの宴会の合唱を扇動するのは、ノンシャランとした芸妓。置かれたところで生きることを身体で示す。人生なるようになる、という神々しい教訓。五所平は他の小市民映画の大団円とは違う終わり方を用意した。
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