「脱獄」
冒頭、ここはニューメキシコ。
荒れた大地、1人のカーボーイが煙草を吸う。彼の名はジャック。愛馬との旅、親友、刑務所、国道60号、美しい女流画家、密入国、メキシコ難民。今、親友を助ける為に男は刑務所へ、そして脱獄へ…
本作はデイヴィッド・ミラー監督がカーク・ダグラス主演にしたE.アビイ原作を脚本家のトランボが担当した現代西部劇の傑作をこの度、初円盤化され購入して鑑賞したが良かった。
数年前にトランボの赤狩りに会った時の時代背景をバックにした映画を日比谷のTOHOシネマズで見て、その年のベスト10に選んだほど面白かった作品がある。
これらを踏まえて見たり彼がアカデミー賞脚本賞に輝いたローマの休日や黒い牡牛を見てから本作をみてもいいのかもしれない。
とりわけ1947年9月23日から共産主義者の疑いがある映画人をブラックリストにして最初に10人を喚問した所謂ハリウッドテン等の歴史を予備知識として見ても楽しいと思う。
まず若き日のジーナ・ローランズがすごく美しい。
それにバーでのいちゃもんつけられて喧嘩するシーンは見所。
牢屋の柵を隠し持っていたノコギリで壊す緊張感あるワンシーンや大森林の山々でのヘリコプターと警察に追われているジャックの追跡劇と銃撃戦は凄い緊張感と迫力に満ちている。
さて、物語は反骨精神に溢れる主人公ジャックが不法移民をかばって投獄された親友を救うべく自ら事件を起こして刑務所に入り、そこで共に脱獄しようとするが親友はそれを拒み、結局彼が1人で脱獄する。
そして愛馬と共に逃走するが州警察のヘリコプター等に追い詰められていく…と簡単に説明するとこんな感じでこのようなカーボーイがもし今の時代に存在していたらと言う観客への問いかけにも感じるようなテーマを少なからず感じる1本であった。
また保安官役のウォルター・マッソーがとんでもなく、じわじわ追い込んでいく芝居がたまらなく良かった。
それから馬に詳しいわけではないが本作に出ているブラックスターの真っ白で美しい"たてがみ"やモノクロトーンに合うチョコレート色のボディーがなんとも綺麗で、もう1人の主役である。
これ撮影場所が多分アルバカーキ周辺だと思うのだがあの山脈での撮影はかなり大変だったと思う。
映画を見るとわかるが、男と馬が山の斜面を上っていく時に岩場からゴロゴロと岩が落下したりかなり恐怖を感じる場面でもある。
それにあそこまで登ると酸素不足になってかなり頭がぼーっとすると思うから、俳優魂で何とか乗り越えたんだな。
それにしてもダグラスはまだご存命だったんだね。もう流石に天に召されてると思ったけど、なんと今年で103歳らしい…。
という事は息子のマイケルダグラスがオスカー受賞した時も当然知ってるだろうし、何か監督ではゴダールだけが生き延びて(共に過ごした監督や俳優はみんなご臨終)俳優はダグラスがこの歳にまで生き延びてるって何か宿命を感じるような…
ダグラスとトランボが互いに尊敬しあっている事は知っていたが、この作品ほど相性が良いのも中々ないんじゃないか。とりわけ今までディスク化されていなかったことに驚く。
多分そのうち復刻シネマライブラリーでTSUTAYAにも並ぶと思うから時期を見計らってぜひ見てほしい。
余談だが、配給元のユニバが収入が見込めないからと直ぐに上映をやめた経緯があったらしいが評価はかなり高い…。