Jun55

東京物語のJun55のレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.5
神奈川近代文学館で小津安二郎の特別展があり、改めてこの作品を認識、鑑賞。
邦楽は殆ど観ないのだが、本作は、2012年に英国映画協会発行の映画専門誌で「世界映画史上ベスト作品」に選ばれ、Rotten tomatoesは100%。なぜ本作が海外でもこうも評価されるのか?これが第一の鑑賞動機。

小津映画の特徴は多く語られているので、それを繰り返す必要はないと思うのだが、普遍的な家族の関係性をテーマにし、観る側が、登場人物の誰かと自分を重ね合わせ、徐々にそのストーリーに入り込み感情移入が始まる。(ちなみに、小津は戦中に多くのアメリカ映画を観ていて、東京物語もアメリカ映画にヒントを得たもの)
また、家族の関係性の着眼点もユニーク。
恋愛関連が希薄、というのも特徴かもしれない。

”練りに練られた”シンプルさが、登場人物の発する言葉に重みをもたせ、そして発する言葉に隠された登場人物の感情を想起させる。(映画は観客側が懐を持つことが重要だと思う)

戦後間もない、この時期は、映画界も政治的な動きも大きかった。
敢えて、この時期、普遍的な家族をテーマを全面に出しつつも、戦前、戦後の世代間の葛藤、反戦的メッセージを加え、その時代ならではの内容に仕上がっていることも見逃せない。

超一流の俳優が出ているわけだが、演じている、という感覚はなく、市井の人の生活を観せられ、自分もその場に引き込まれるような錯覚に陥る。
これも小津の巧みな演出の効果なのだろう。

小津の他の作品も観てみたい。
Jun55

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