とり

ポセイドンのとりのネタバレレビュー・内容・結末

ポセイドン(2006年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」に並々ならぬ思い入れがあって、リメイク決定当時からこの映画を楽しみにしていました。
どう考えてもあのパニック大作を超えるのは難しいやろ⋯と思って、完全に別物として頭を切り替えて観たんですが、かなり良かった!これは大画面・大音響で観るべき映画!人によっては不評ポイントかもしれないけど、ドラマ性をだいぶ排除してあくまでもアクションパニック映像の連続でまとめられている点が良かったです。

そもそもオリジナルの方だって、殿堂入りしてるとは言え、決して100点満点がつくような出来映えでもなかったわけです。ドラマ部分は確かにこのリメイクよりはよく出来ているし、ハックマン演じる牧師の有意義さも相当なものでした。
が、時代は移り変わります。当時は絶望感で彩られたアメリカンニューシネマの終息期でもあり、再び希望があふれ光が射すかのようなハリウッド大作が作られ始めた頃でもあります。オリジナル版はまさにその先駆けというか、時代にドンピシャと合っていたわけです。時代性を色濃く反映した作品が神がかってしまうのは必然とも言えるでしょう。

で、リメイクと言われる本作。さすがに映像面の凄さは期待通りで、沈没シーンなどはこれでもかという程の力の入れよう。おそらく大半はCG処理されていると思われる船体ですが、ごくまれに爆発シーンなどでは模型を使ったのではないかと感じました。模型といってもそれなりの大きさではあるのでしょうけど、ややちゃちい感の否めないシーンが若干。
ただし、オリジナル版では規制がかかって無理だったのであろう、死体がそこかしこに漂流しているシーンが多数あったのは大満足。別に私はグロ趣味というわけじゃないですよ。
あとオープニングで豪華客船ポセイドン号の全景が登場しますが、このシーンもおそらくCGですね。ヘリで客船の周囲360度をグルリ空撮してるっぽい構図ですが、導入としてはいい映像でした。

その後わずかな時間を割いて主な登場人物の紹介になりますが、まぁこんなもんでいいんじゃないですか。人によっては掘り下げが足りないとか物足りないといった感想を持つかもしれませんが、簡単なバックグラウンドがわかれば後は想像で好きなように補えますし。
ドラマ部分の説明が足りない分、メインメンバー中の身内の比率が大きいのは良かったと思います。オリジナルでは確か夫婦2組以外はそれぞれ赤の他人でした。(と思ってたけど後日、若い姉弟がいることを思い出した)
今回は元市長家族と市長を見たことがある女性、というつながりでメンバーの約半数を占めます。あと個人的な好みになってしまいますが、絶望的な状況下にある父と娘という設定がなんか自分と重ねやすくて好きです。娘の立場に立ちやすいので悲劇性が一層増すんですよね。

主役はジョシュ・ルーカスになるんでしょうか。クレジットが先にあったし。でも印象としてはカート・ラッセルとのW主役って感じ。オリジナルで言うところのハックマンとアーネスト・ボーグナイン的で、頼もしいリーダーが2人ってところですが、各種設定をあえて逆方向に持っていっているのはわざとでしょう。
他にもいたるところでオリジナルをあえて逆手に取った演出(オマージュとも言う)が見られます。↓ざっと挙げてみました。

≫自己犠牲と自分優先視点、生き残る人々の種類、ピアノの少年、水死キャラの有用性及びアイテム、縦穴(エレベーターシャフト)での最後尾2人、居残り組が知り得る情報のレベル、主役は黙って自分だけ上に行こうとした、などなど≪

もうとにかくアクションに次ぐアクション、ノンストップで迫り来る水・炎で、潜水シーンも無性に息苦しかったりで、ぜひもう一回大画面で観たいものです。

とまぁ、やたら褒めちぎりですが残念だなぁと思った部分も少なからずあり、やはりせっかく逆さまになる豪華客船というシチュエーションなのだから、そこをもっと活かして欲しかったというのは最後までありました。
オリジナルでは逆さまの船内が興味深く描かれていたものですが、今回は特にそういった印象が残らず残念です。セット自体はよく見るときちんと逆さまになっていて(当たり前)床に蛍光灯があったり、ポセイドン号が逆になって沈没しているように見えるポスターにクローズアップしたりもしてるんですが、総じて印象に残りません。本当に。
あとは登場人物のうち誰が死んでしまい誰が生き残るのか、ひじょ~にわかりやすいのも残念です。ちょっとした掟破りでもしてくれれば良かったのにな、と思います。

オリジナルに寄せたポスターのデザインも凄くいいです。海中に沈む逆さまのポセイドン号。色も綺麗だし質感に絶望感が漂っています。
とにかく迫力重視のパニック映画好きには満足できる作品だと思います。
ありがとうペーターゼン監督!

MOVIX亀有
とり

とり