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君も出世ができるのほーりーのレビュー・感想・評価

君も出世ができる(1964年製作の映画)
4.4
「そうすりゃできる!出世ができる!できる!できる!俺も出世ができる~♪」と歌ってピョンピョン踊るフランキー堺の姿を見ていると顔が思わずニンマリしてくる。

星野源も好きな映画として挙げる1964年の和製ミュージカル映画『君も出世ができる』。監督はこの翌年に松本清張原作のあの『けものみち』を撮る須川栄三。

大手観光会社に勤務する上昇志向のフランキー堺とマイペースな同僚の高島忠夫が主人公。

偶然にも社長(演:益田喜頓)の愛人(演:浜美枝)と知り合った高島に対して、社長の弱みを握ったのだから、それを出世するために活かせとフランキーははっぱをかけるが、ひとのいい高島はなかなか乗り気がしない。

そんな中、海外に留学していた社長の娘(演:雪村いずみ)が帰国し、会社の経営に携わることになった。早速彼女はアメリカナイズされた合理主義で経営改革を断行するが……。

東宝が満を持して製作した本格的ミュージカルだが興行的に惨敗してしまい、当時の映画会社幹部が「もうフランキーの映画は作るのを止めよう」とボヤくほどだったという。

確かにヒットしなかったのもわかるような気がする。ほぼ同時期に公開された『ウエスト・サイド物語』や『シェルブールの雨傘』の陰鬱さのある新時代のミュージカルに比べるとちょっとひと時代古い作風であるし、ジョージ・チャキリスやリタ・モレノ、カトリーヌ・ドヌーヴに比べると本作のフランキーや高島忠夫は些かとうが立っているのも原因のように思う。

むしろ現代の方が一周まわって抵抗感なく思いっきり楽しめる作品で、フランキー筆頭に、高島忠夫、雪村いずみ、中尾ミエ、益田喜頓、有島一郎、藤村有弘といった芸達者なスターが歌い踊るシーンは次第にウキウキした気分にしてくれる。

谷川俊太郎と黛敏郎が作詞作曲したタイトルの『君は出世ができる』や『アメリカでは』はじめ名曲も揃っている。

■映画 DATA==========================
監督:須川栄三
脚本:笠原良三/井手俊郎
製作:藤本真澄
音楽:黛敏郎
撮影:内海正治
公開:1964年5月30日(日)
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