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アキラ AKIRAのeucalypsoのレビュー・感想・評価

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)
4.0
ナウシカとアキラの2本のアニメ映画は、後世のカルチャーを根本から変えてしまった、80年代の日本が生んだ得体の知れないエネルギーの特異点、怪物だなぁと改めて思う。

ナウシカとアキラは共通項も多い。どちらも原作が傑作で映画よりずっと深くて面白く、連載途上で原作者本人によって映画化されてる。

核戦争をメタファーにしたポスト・アポカリプスな世界にメシア=救世主が現れる。メシアであるナウシカとアキラの扱いが、作品内でうまく収まりきれなくて、当時のニューエイジ、スピリチュアルな居心地悪さを感じる点も似ている。

21世紀の庵野版ゴジラがその辺うまく蓋をして大人の采配をしていたのに比べると、特にアキラの後半は、元ネタの1つである幻魔大戦っぽいソレが炸裂していて、今観るとうーんとなる部分も。

そこに、ゴジラにおける芹沢博士のような狂言回し役の大佐を配置し、大佐と金田(健康優良不良少年!)が両極で異能者ではない普通をキープすることで、スピなドラッグ・ムービーとして暴走するところをグッと踏み止まってる。大友克洋の剛腕なコントロール力、バランス感覚が光る。

冒頭のバイク・チェイスと、最後の巨大化する鉄雄を筆頭に、当時の凄腕アニメーターたちが結集した、実写映画と漫画〜アニメを串刺しにするハイパー・リアルな表現はまったく色褪せていない。ココで培われたリアル系作画の流れが消滅しつつあるのはさみしい。

芸能山城組のケチャとガムランを使った音楽は最高最強で、本家メビウスよりギラギラした彩度の高い色彩設計と相まって、ブレードランナーのロサンゼルスと同じく、ネオ東京は近未来都市の代名詞として記憶に残ることに(もちろん2020年の後も...)。

当時、劇場で観て、その後、何度か再見。いつ観てもブッチギリのオリジナリティに元気をもらえる破格の一本。
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