LalaーMukuーMerry

バビロンの陽光のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

バビロンの陽光(2010年製作の映画)
4.4
私はクルド人の老婆です。戦争で何年も行方不明になったままの息子を探しに、田舎(イラク北部)から、ナシリア(イラク南部)という町に向っている所です。その町には戦争捕虜を収容している刑務所があると聞いていたので、アメリカとの戦争に負けてフセインが倒れた今なら(2003年)探しに行けると思ったからです。

孫の男の子との2人旅です。孫は小学校でアラビア語を勉強しているので話せるけれど、私はクルド語しか話せませんからね。この子が頼りなんです。

息子は音楽をやっていたのに、戦争に駆り出されてしまいました。孫が持っている縦笛は息子のです。孫は、父親の顔を知りません、生まれたときにはもういなかったのです。戦争が始まって(1991年=湾岸戦争)から、私たちクルド人の村はフセインの兵士たちに襲撃され、村人がたくさん殺されました。あの事件のことは話したくありません。

何百kmもある道のりだけど、歩いてます。車が通ったら乗せてもらうつもりです…

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・イラク戦争が終わった直後のイラクの風景と哀愁のイスラム音楽が印象的な、ロードムービー。
・男の子が、明るくて、おばあちゃん思いで、とてもかわいい。
・おばあちゃんの「許す」という言葉が、一筋の希望に感じた。だから、ラストがほんとに切ない。

・クルド人とアラブ人、日本のニュースを聞くだけでは実感できない民族問題。
・戦争で行方不明になった家族を探す人々は、遺骨を見つけるまで諦めきれない。そんな人々がたくさん生じる。 最後に示される数字の大きさに呆然となる。