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逮捕命令のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

逮捕命令(1954年製作の映画)
5.0
【絶体絶命が駆け抜ける】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の西部劇『逮捕命令』を観た。チラホラ凄い監督だと聞くものの、なかなか遭遇しない監督アラン・ドワンの作品と遂に対面したのだが、これがとてつもなく面白かった。

爆竹に火をつけ、散り散りになる子どもたち。そんな無邪気な子どもたちも、不穏な空気を漂わせる男たちを前にガチの逃亡をみせる。連邦保安官のマッカーティ(ダン・デュリエ)一味は、結婚式を挙げようとするダン・バラード(ジョン・ペイン)を逮捕しようとしていたのだ。彼は正当防衛で人を殺していたのだ。町の人々から不信感を集めた彼は無実の罪を証明しようと外部に連絡を取ろうとする。

面白い修羅場映画とは、最悪な状態の中で幸運が訪れ続けることにある。本作におけるダンは堂々とした風格を持ちつつもタイミングが常に悪い。物語の中心には正当防衛や事故があり、それでうっかりと、次から次へと人が死んでいき、不味い状況になっていく。その状況に追い込むのは、保安官であったり市民であったりする。納屋に逃げるダンを追い詰める場面では、上から侵入して戦闘が始まるわけだが、群衆が扉を開けると、ダンが明らかに皆殺しを行ったかのような構図になっている。袋のネズミであるにもかかわらず、なんとか切り抜ける。そして、行く手にある僅かな障害物を使って、ギリギリの攻防を繰り広げる。この「ギリギリ」の魅せ方が素晴らしい。

例えば、スッとテーブルの下にダンが潜り込み、ヒョイっと倒して即席のシールドを作る。横移動しながら、開けた空間をカメラが捉えると、遠くに人影がいる。画面からは遠くの敵がダンを見ているのか分からないのだが、彼は大胆にも開けた道を駆け抜けていく。右にも左にも人がいる窮地では、樽で顔を隠しながら2階へと逃げる。逃げた部屋に、一味が入ってきて捜索を始めるのだが、ギリギリのところで発見されずに済む。

常に手汗握るアクションと、間一髪窮地を免れる描写が畳み掛ける。その中で人が次々と倒れていく。完全に無罪とはいえない大殺戮、その末路に待ち受けるあまりにも馬鹿馬鹿しいある人物の死に様を配置する粋さも含め最高の作品であった。
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