すずす

頭上の敵機のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

頭上の敵機(1949年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

俳優から監督に転身し、100本以上を手掛けた名匠ヘンリー・キング監督、FOXの大君ザナック製作による実話を基にした戦争映画の名作。

戦争映画の大部分は前線の一兵卒の視点、もしくは、パットンのように高名な指揮官を描くが、本作は准将という中間管理職の悩みを描いているのが特長。
司令部にいると、部下をコマと考えるが、現場に行くとそうもいかないジレンマ。戦争をこの視点で描くことで、人間の矛盾・複雑さが炙り出されていく。

1949年、ロンドン。老年紳士ストーバルが骨董屋で道化師柄のビアカップを購入、航空隊の基地跡地に来て、回想がはじまる――

1942年、一早く欧州戦線に参戦したアメリカ軍の航空隊は苦戦していた。サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)は友人キース大佐を解任し、自ら部隊を指揮することになる。サヴェージはバーを閉め、ルーズな部下は容赦なく降格させ、隊の規律を高めようとする。しかし、部下は反旗を翻し、全員が転属願いを提出する。しかし、サヴェージ准将の部下ストーバル(ディーン・ジャガー、アカデミー助演男優賞受賞)が書類の確認に時間を掛けて、准将を支える。
この間に爆撃などの練習をこなし、遂に出撃した部隊は危険な低空飛行でターゲットの爆破に成功する。
しかし、監察官が部隊の視察に訪れ、准将たちが申請を遅らせていた転属願いの件で罰せられると思うが、部下全員、転属願いを却下し、部隊は一つになっていく。彼らの集うバーの片隅、道化師のビアカップは出撃の合図だったのだ。
ドイツ本土の爆撃に向かうようになり、一機また一機と失われていく中、サヴェージ准将も前任キースのように、部下たちに情を移っていく。そして、遂に出撃の際に、身体が硬直し、動けなくなってしまったのだった。
飛行場跡地で思いに耽っていたストーバルは、マグカップが籠に入った自転車に乗って、その場を去るのだった。

空中戦には第二次大戦のアメリカ軍、ドイツ軍が撮影された実写フィルムも使われているだけに、円谷英二よりも迫力は数段上。

2年前のNHK放送以来二度目の鑑賞。やっぱり戦争映画としては異色で際立った面白さがあります。
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