人里離れた谷間にある農村に両親と祖父と暮らす少女テス。しかし父の突然の転落死によって彼女の生活は一変してしまう。
ヴィンセント・ウォードの劇場第一作目。少女と氷と風の物語というアオリ文からして美しく、ただひたすらに詩情感溢れる映像が広がってゆく。
父の遺体を担いで家までやって来た見知らぬ男イーサン。熊のような大男にテスは惹かれるが、母親もまた彼に惹かれている。テスの内側で初めて沸き起こる感情と心の揺らぎを大自然というキャンバスに繊細なタッチで描くウォードの手腕恐るべし!
そして少女が女性へと変わる映画には初潮が不可欠。私は映画の中に出てくる初潮シーンが大好きなのだ。
ヴィンセント・ウォードはもともとドキュメンタリーものを製作していた人物らしく、その影響もあるのか、この人の作品には自然と人間とが同化し共存しているような趣が少なからずある。もっと評価されてもいい監督なのに知名度の低さが目立ってしまうのがとても悲しい。
せめて本作『ビジル』と少年ファンタジーと見せかけて超絶鬱エンドで〆る『ウイザード』をセットにして円盤で発売してくれればなあ。