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死霊のはらわたのMOCOのレビュー・感想・評価

死霊のはらわた(1981年製作の映画)
5.0
「何故私をおこしたのだ」


 1980年に『13日の金曜日』を観たとき、映画に求める「怖さ」は日本人とアメリカ人では大きく違うと感じました。
 日本人は単純に幽霊に出逢うことや、憑かれる怖さを求めているのですが、この頃のアメリカ人は切られたり、切り刻まれる「痛さ」を伴う怖さを求めていたのではないでしょうか?
 その表現を過激にした「スプラッター」映画に火をつけたのはこの「死霊のはらわた」なのかもしれません。


 アッシュと姉のシェリル、アッシュの恋人のリンダ、友人のスコットと恋人のシェリーの5人は人里離れた森の小屋で休日を過ごします。

 夕食のパーティーの途中、 誘うかのように開いた地下室の扉から階段を降りたスコットとアッシュは、それが災いをもたらすとは知らずに地下室にあった本(『死者の書』)とオープンリールデッキを見つけ、シェリルが怖がっているにも関わらずテープを再生します。
 テープには悪霊を蘇らせる呪文が吹き込まれていて5人は恐怖の一夜に巻き込まれて行きます・・・。

 夕食の後、森から聞こえる声に呼び寄せられたシェリルは森の木に襲われ、からだをまさぐられ小屋へ逃げ帰ります。
 シェリルは、あまりの恐ろしさに「今すぐ町へ帰る」と、アッシュの運転で山を降りようとするのですが、来るときに渡った橋は崩落しており、やむなく小屋へ引き返します。

 アッシュは呪文を流したテープの続きを聞き始めるのですが突如シェリルが憑依されて、風貌が変わり、リンダの足首に鉛筆を突き立てて、襲ってきます。
  スコットは斧で反撃してシェリルを地下室へ落とし閉じ込めるのですが、しばらくしてシェリーが窓を破って侵入してきた何かに憑依され、スコットに襲いかかります。
 スコットは大怪我を負いながらシェリーを倒し、テープに録音されていた「死霊を倒す方法」の通りにシェリーを斧でバラバラに切断し、アッシュと2人で埋葬します。
 スコットは歩くことが出来ないリンダとアッシュを残し、下山すると言い出し小屋を出て行きます。

 アッシュは、怪我の後眠っているリンダの様子を見に行くのですが、足首の傷が突然クモの巣のように広がり、リンダは歩くことが出来ないまま容貌を変えてしまいます。
 その時「森に襲われた」と、瀕死のスコットが帰ってきます。異様に高い声でしゃべり笑い続けるリンダを小屋の外に引き摺り出したアッシュは、スコットに話し始めるのですがすでにスコットは・・・。

 その時正気に戻ったリンダが帰ってきて、地下室からはシェリルの正気の声が・・・。
 アッシュは憑かれたシェリルとリンダに襲われリンダが持つナイフでリンダを殺します。

 アッシュはリンダを倉庫に運びチェーンソーでバラバラに切断しようとするですが、決心がつかず埋葬します。リンダは土の中から飛び出しアッシュに襲いかかり、アッシュはスコップで反撃してリンダの首を切断します。

 小屋へ戻ったアッシュは、地下室の扉が壊されシェリルが地下室にいないことに気がつきます。アッシュはシェリルに襲われ、さらにスコットも・・・。
 身動きが出来ないアッシュは暖炉の火をもらい表紙に火がつきはじめた「死者の書」を目にします。
 アッシュはなんとか「死者の書」を手繰り寄せ、暖炉に投げ込むと2人と「死者の書」は断末魔をあげ「お前も来るんだ」と・・・。
  やがて夜明けが訪れ、安堵の気持ちでアッシュは小屋を出るのですが声の通りに・・・。


 公開当時、それまでのゾンビ映画のメイクが単なる化粧だった・・・と感じさせる衝撃的な映画でした。
 この映画も何人も友人を招いて何度も一緒に観賞した映画です。

 アッシュの手が鏡の中に入ってしまうシーンと、本が暖炉に投げ込まれてシェリルとスコットと本が朽ちて行くシーンは圧巻です。あらためて観ると貼り付けられた立体のメークが所々で剥がれていて、撮影が過激だったこともわかります。
 シェリルとスコットと本が朽ちていくシーンは無音となりレイ・ハリーハウゼンのコマ撮りを思い起こさせてくれます。
 公開当時の革命的なメイクの死霊は当然☆5なのですが、その脚本はオカルト映画にありがちな矛盾が満載です。

・山小屋に向かう途中フォードのトラックにぶつかりそうになるシーンは必要なのか?

・山小屋到着時にブランコが異常な動きをしていて突然止まるのに誰も怖がらないで何も語らないのは?

・まだテープを聞いていないのに、突然振り子時計が止まってシェリルの右手が支配されスケッチブックに何かを書き始め、森から「来るんだ」と呼ぶ声が聞こえる。
・・・それを伝えても誰も怖がらない

・まだテープを聞いていないのに、夜のパーティーで突然地下室の扉が開くのに誰も「怖い」と言い出さない

・一人で地下室に降りて行ったスコットを心配して大声で呼び続けても全く返事がない。狭い地下室なので、絶対あり得ない

・食事の後シェリルは再び「来るんだ」と森の中からの声を聞くが、あれほど怖がっていたのに誰にも相談せず、一人で森に入る
・森で襲われたシェリルが何か?から逃げ出し小屋まで走るが、そんなところまで絶対1人で行かない距離
・シェリーは森の何かから逃げ出し小屋にたどり着くが、小屋に鍵がかかっていて、鍵は扉の上においてあるが、外に出たシェリー以外が小屋に鍵をかけるのは不自然?

・アッシュは異常を感じて車を降りるが、助手席で怖がるシェリルに何も言わず車から離れる
・異常は橋の崩落だったのだが、停めた車から橋までの距離が長すぎて橋の異常に気がつく距離ではない

・シェリーが「(窓の)外に何か居る」と怯えているのにスコットは外を見ることなく「少し横になるといい」と言う
・寝室の窓が大きな音を立てて割れ、シェリーは部屋に侵入した何かに襲われ大声で叫ぶが、その声が聞こえていてもアッシュは駆けつけない
・憑かれたシェリーがしゃべりながらスコットをいたぶるがアッシュはシェリーがしゃべり終わるまで助けようとしない。等々・・・


「死霊のはらわた」は1984年だったか某TV局が特番でもうすぐ公開される映画として何本か紹介した映画の中の一つでした。
 それまで映画が予告特集された記憶はなく「死霊のはらわた」とオーストラリア発の「レイザーバック」は特にお薦めの作品として紹介されました。
 劇場公開された「レイザーバック」はとんでもなくつまらないイノシシ映画でしたが、監督のラッセル・マルケイはミュージックビデオの監督としては有名人でこの映画が初監督作品だったことも、後に『ハイランダー』のシリーズや『バイオハザードIII』『スコーピオン・キング2』を手掛けることなど知る由もなかった訳です。

「死霊のはらわた」はシリーズとして2・3と制作されるのですが、先行して劇場で観た2人の友人がダメ出ししたために今日まで観ていません。

 それにしても1981年にアメリカで公開された「死霊のはらわた」が日本では 1985年の公開と隔たりがあるのは一体何だったのでしょうか?
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