タクマ

ノロイのタクマのレビュー・感想・評価

ノロイ(2005年製作の映画)
4.3
「たぶんねえ、もう全部ダメなんだよ」
あれはいつ頃だっただろうか?
ある怪談系YouTubeチャンネルで本当に極限の恐怖を体験した人間はその恐怖を封印し忘れてしまう本能があると言う話を聞いた事がある。昔から金縛りとか夢関連で怖かったり不思議な体験が多いワイですかそのレベルの体験は流石にないなあって思ってました。それを覆してきたのが本作「ノロイ」である。
怪奇実話作家・小林雅文の残したビデオを白石晃士監督が映画形式で発表したとされるモキュメンタリー作品。
学生時代に何度か見てた作品ですがツイッターのフォロワーさんのレビューをきっかけに今回再鑑賞。見ている内にホラー映画を専門に映画を楽しんでいたあの頃の自分が本当に見てられん位ビビる程怖い映画やったのを思い出しました。
第1に、この映画は作り話やなくて本当にあった話なんやっていう設定が見かけ倒しに終わってるんやなくてそのリアリズムが映画を見ている観客に確実な恐怖を与えてるから凄いですよね。演出的には「ほんとにあった呪いのビデオ」のドキュメンタリー式と「呪詛」のPOVの良い所を組み合わせた感じやけどあれと比べても話の見せ方が凄い現実的っていうかこれはマジでほんとにあったんじゃないか?って見ている内にどんどんすりこまれて行くから没入感も凄い。
お話としては主人公である小林が行方を眩ますまでの経緯が基礎になるわけやけどその中で描かれる土着信仰と触れてはいけない禁忌、解き明かされる呪いの真実、それらの要素が新たなる恐怖の連鎖を生み観客を沼に引きずりこむラスト。この辺りの作り込みや途中で出る廃屋や神社のディテールがしっかりしてるから見終わった後はもしかしたら次に呪いの被害を受けるのは自分かも知れないと思うような今の自分の日常も恐怖で覆われてしまうんじゃ無いかと疑う様な不気味な余韻が残る。出演者も実際にいる芸能人を使ってるのが現実と非現実を狂わせる要因の一つかも知れない。
同じ白石監督作品だと「コワすぎシリーズ」や「カルト」は怖さの中にもくすりとしてしまうエンタメ寄りな怖さやったけどこっちはそういうのではない本来人間にはなかなか目覚める事はないこれは自分の生命が危ないぞと言う本能が働くと言うか人間の危機関知能力を呼び起こす恐怖の本質を付いてくる映画だった。近年海外でも盛り上がりを見せてきたモキュメンタリーホラーであるがこの作品は実質その最高クラスであり一本のホラー映画としても十分に傑作と言えると個人的には思います。
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