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つみきのいえのkuuのレビュー・感想・評価

つみきのいえ(2008年製作の映画)
4.0
『つみきのいえ』
製作年2008年。上映時間12分。

短編アニメーション作品。
監督は短編アニメを製作してきた加藤久仁生。
監督・脚本の加藤久仁生は、1932年のアカデミー賞短編アニメーション部門創設以来、アジア人として初の受賞者となったそうな。

海の上に建つ積み木のような家に住んでいるおじいさんは、海面がどんどん上がってくるので、家を上へ上へと建て増し続けていく。
そんな不思議な家に住んでいるおじいさんの、家族との思い出の物語。

今作品のストーリーのポイントは、水面が上昇し街が水没することじゃない。
水は過去を表し、浸水したものは記憶の中に埋もれていく。
人は、水から逃れるために上に向かって建物を建て続けるが、それはその意味で人生を表してるのかな。
パイプを落とすと、それを追って水の中に入っていく。
そうすることで、彼は過去を掘り下げる。
パイプは感傷的な感情を表し、それを追いかけることで、幼少期から現在の老境に至るまでの人生を追体験することになる。
エンディングは、その感情を再び体験することで、亡くなった(と思われる)奥さんが恋しくなり、孤独になったということを表す。
子供も成人し、自分の人生を歩み始めた今、彼に残されたものは何なんか。限界に達するまで、そして最終的には死、つまりこれ以上積み上げることができなくなるまで、積み上げ続ける(生きる)こと。
個人的には、孤独と人生というテーマを扱ってる(勝手に思ってるかもしれませんが)るのは素晴らしいストーリーテリングやと思いました。
短い作品ながら泪が流れました。
感情的な衝撃を与え、成熟したテーマを扱う今作品は、優れたストーリーテリングの達人であり、この点においてインスピレーションを与えてくれる映画でした。
今作品は、一人のキャラに焦点を当ててて("て"のトリプルでました)、彼は人生の中で人を失った過去を追体験しなければならないこと、そして家を高く建てることで彼らの思い出を残していることに対処してる。
しかし、最後には、彼らを思い出すことがいかに重要であるかを思い知らされる。
今作品はエンディングも良いアニメのひとつでした。
また、技術的にはアニメに分類されるやろけど、アニメーションのスタイルは他のアニメとは全く異なってるかな。
あまり見たことのないような、より抽象的な描画スタイルを持ってました。
また、単純に見ていて美しいし、あらゆるテイスト(アニメが好きな人、アニメが嫌いな人、アニメ全体が好きな人、映画が好きな人、いい話が好きな人、等々)の人に好まれる作品なんちゃうかな。
あらゆる意味で善きアニメーションでした。
感情的な衝撃を与え、素晴らしいテーマを扱い、脚本も巧みでした。
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