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スモークのkuuのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.2
『スモーク』
原題Smoke.
製作年1995年。上映時間113分。

ニューヨーク、ブルックリンの小さな煙草屋を舞台に繰り広げられる人間模様を、それぞれの真実と嘘、現在と過去を交錯させながら描いた群像日本・米国合作作品。

ブルックリンの片隅で煙草屋を営むオーギー。
彼は、毎日10年以上同じ場所で同じ時刻に写真を撮影している。
煙草屋の常連客である作家ポールは、数年前に妻を亡くして以来、スランプに陥ってた。
ある日、ポールは路上で車に轢かれそうになったところをラシードちゅう少年に助けられ、彼を2晩ほど自宅に泊めてあげることに。
その数日後、ポールの前にラシードの叔母だという女性が現われ。。。

1980年代以降、現代米国の近代からの脱却ボストモダニズム文学の第一線で活躍する作家でもあり詩人のポール・オースター(小生は詩人としての彼が好きです。"Disappearances: Selected Poems "など愛読)はアメリカの下町に生きる人たちの日常と、フッとした時に起きるチョイとした事件をスケッチしながら、決して人物の内面に深くは入り込まへんで、いつも一歩引いた所から、ことの成り行きをクールに見つめる作風が特徴で作詩もそないな感じです。
なんでも、『ニュー ヨーク・タイムズ紙』に発表されたクリスマス向けの彼の短編小説を基に、オースター自身が脚色を手がけて、中国系米国人の映画作家ウェイン・ワンによって完成された本作は、そんなオースターらしい『距離』てか『間の効いた』の視線感じる佳作やと思います。
ブルックリンに住んどる作家のポール・ベンジャミンは、嫁さんを銀行強盗の撃った流れ弾で失ってしもた以来、長いスランプに陥っとった。
ある日、路上をぼう然と散歩している内にバスに轢かれそうになったボールを、一人のBLACKの少年が助ける。
命を救われたお礼に、家がないという
その少年を自宅に宿泊させるボールってとこから展開していく。
二日後、少年は銭の入った袋を残して姿をくらます。。。
ここに登場するキャラは皆、心に何かしらの傷を負っとるけど、冒頭から最後まで行き過ぎのおセンチな感情を抑えて、人物の細やかな所作やったり、時間の移ろいとか、そないな中で行きつ戻りつ、近づき離れる人たちの『距離』てのをきっちり切り取って作ってる感じがします。
それはまるで本作の表に出てこない所で物事を動かす人の如く、狂言回しとなる煙草屋の主人オーギー・レンが14年間に渡って撮り続けとるブルックリンの街角の風景そのものかな。
は何も語らずとも、何気ない日々の風景の連なりを見つめ続けるうちに、観てる側は、その豊かでたおやかな時間の流れそのものに物語が潜んでいることを感じると思います。
オースターは、キャラ各々に実在感を与えるため、俳優たちにダイアローグの一部を書かさせ、ウェイン・ワンも現場での即興演技を積極的に取り入れながら、撮影を進めていったそうです。
その方法がよかったのか、本作じゃ、ハーヴェイ・カイテルやウィリアム・ハートといった名優たちでさえもその辺にいる人みたいな生活感や表情をたたえてるんやろなぁと思います。
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