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the EYE 【アイ】の消費者のレビュー・感想・評価

the EYE 【アイ】(2002年製作の映画)
3.8
・ジャンル
心霊ホラー/ドラマ

・あらすじ
角膜移植手術を受け視力を取り戻した盲目の女性、マン
術後は僅かな痛みこそあったが順調に視覚は鮮明になっていき少しずつ見える事に慣れていった彼女
しかし間も無く不可解な現象に気付く事となる
他の者には見えない人々の姿がマンの目には見えていた
やがてそれは全て死者である事が判明
更に不可解な夢や見覚えのない部屋の幻影までもが見え始めマンは徐々に恐怖で憔悴していく
相談を受けたセラピストのワ・ローは初めこそ信じなかったが彼女への想いから主治医である叔父にドナーが誰なのか教えるよう頼み込み…

・感想
タイで実際に起きた角膜移植を受けた少女が手術の1週間後に自殺したという事件に着想を得て製作された三部作の1作目
香港ホラー界の雄、パン兄弟が注目を受けるきっかけとなった作品でもあるとの事

端々に粗は見えるもののとにかく映像描写が素晴らしかった
盲目の女性が角膜移植で視覚を徐々に取り戻していく、という過程にJホラーを踏襲した巧みな心霊描写の数々が上手く絡められていてとにかく見事
話の進展こそ遅いもののだからこそ霊の見せ方にバリエーションを持たせられていたり、心霊ホラーに必須の悲哀が色濃く見られたり…
ドナーである中国系タイ人の女性リンの背景や正体も結末まで上手く活かされていて良いしバッドエンドとハッピーエンドの入り混じったオチも心地良い余韻を残してくれた
内容は全く違うけど「仄暗い水の底から」に近しさのある美しい悲劇という感じ
舞台である病院やアパートのジメッとした空気感もそれを上手く引き立てていた

特に良かったのは自宅の部屋に重なる幻影と食堂に現れる妻子の霊の描写
前者は鮮明に映すのではなく実際の部屋と奇妙に重なる様が不気味で良かった
後者は磨りガラス越しの姿から入るのが全身へのフリとして上手いしこちらも薄気味悪い(その上、ここにも背景に悲哀がある)
脳腫瘍患者の少女インインとの写真で明かされる新事実も印象的
あとは死を予知する時に見える影が黒沢清監督っぽくて好きだった

惜しかった点としては書道を習う際に現れた女性の霊の安っぽさ、所属する視覚障害者の楽団の活用不足、特に活躍しないのに度々出て来る霊能者、祖母と姉の存在感の薄さ、等
女性の霊に関してはともかく他はちゃんと活かせそうで活かさないので尚更気になった

そういう粗を除けば全体通して秀逸でJホラーが好きなら間違いなく刺さる一作だと思う
シリーズ3作と外伝的な1作があるらしいけどこの手の作品はシリーズ化すると大体劣化していくのでそこが不安
とはいえ完走はするつもり
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