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憎しみのtenのネタバレレビュー・内容・結末

憎しみ(1995年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

衝撃的。目が離せなくなるいい映画だった。
人を撃つのって案外みんな止めるんだ、と思うとそんなに遠い世界の話ではない気がした。
うんざりするほど喧嘩ばっかりの三人組だったけれども、なんだかんだ助け合ってるから仲間意識はあるんだろうな。周りの子たちも含め、妹弟たちを守ろう的な動きはそれぞれしているし、めんどくさい上に度々めちゃくちゃ怖いけど、まるっきり悪い子たちではなさそう。ヴィンスでさえ自分のおばあちゃんに怒られるの嫌っぽいことを仲間に隠してないしね。
好きなシーンが沢山ある。
学校で習わなかったか?とか、お前は白人だから、ってユダヤ系のヴィンスに押しつけるところとか。彼らがどういう社会にいるのかよく分かる。
一方で「哲学がない」ってサイードが突然言い出しちゃうのもとてもフランスっぽい。あれは日本にはない感覚。
おじいちゃんのシベリア話を黙って聞いちゃうとこは、よい意味での子供感が見える気がして和む。話聞くの意外だった。おじいちゃんが意図的に話に入っていったんだとしたらいい人すぎる。戦争生き延びてる人の強さだなーと。
このおじいちゃんにしろ、妻に逃げられたおっちゃんにしろ、さっぱり訳分からん人たちだし三人組は実感してなさそうだけれども、結果助けられてるのがちょっとした光。
エッフェル塔を消すシーンや看板を書き換えるシーンは大好き。美しい。
長い長い一日の最後に、ヴィンスがユベールに銃を渡したことに凄くほっとして、その分、直後の展開に突き落とされた。
遣る瀬ない。
ヴィンスが銃を持ったままでいればあんな目には遭わなかったんだろうな。でも仮にそうであったとして、その先誰かが幸せになったとも思えない。あんなのユベールの性格的に責任感じるんだろうし、あそこからどう転ぶのが彼らにとっての幸せなのかも分からない。
この一日だけを切り取ってみれば意図的に憎しみを集め続けたのは彼らとも言えるとはいえ、それでも踏みとどまろうとした若者を権力を持った人間が嬉々として踏みにじる社会がしんどかった。

病院のもめ事で助けてくれた警察官はほんとに数少ない善良な大人だったし、それを見抜けていたならもっと守られていてほしかったなぁ。
悔しい。苦しい。観てよかった。

複数人がぶわーって一気に喋っている部分、字幕が出ないのが残念だった。出ても読み切れないのだろうけれども。
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