フィンランドらしい。どうやら。舞台が。
先日見た浮雲、どうやらそれが3部作らしくこれがその2作目。キャストが同じなので前作の続きかと思いきやそうではなさそうであった。
男が電車に乗りヘルシンキ、港町にやってくるところから始まる。
夜中に到着したおとこは突如3人組のごろつきたちに襲われ身ぐるみすべてはがされ意識を失ってしまう。
目が覚めると海辺のトレーラー沿いのホームレスたちが暮らす集落。親切なホームレスが介抱してくれた。
親切なホームレスは男にどこから、なにをしにきたのか、名前はなにかを問うが男は何も思い出せない。
暴漢たちに襲われた後遺症で記憶喪失になっていた。
身分証もなければ持ち合わせの金もない。遠くの地なので金もない。働こうにも名前がなければ働せてもらえない。そんなどん底からなんとか生活を勝ち取っていく男の話。
冒頭から結構重い話を覚悟していた。ところが、不思議なことに物語通して沈ますになんなら笑えるシーンのほうが多かったと思う。
それは多分、メインの登場人物たち全員の根底にある優しさが作り出す空気だと思う。
ホームレスという社会の最底辺といえる立場。そんな苦難を日々経験しているからこそ、他者の苦難や苦労に対しての想像力であったり同情心、寄り添う姿勢が一般の階級の人たちよりも鋭いんだろうなあ。百聞は一見に如かず。
そして、その心は伝染しボランティアの兵隊や主人公の男、さらには物語の作風にすら影響を及ぼしているのではないだろうか。
だからさ、俺はもしこの先、自分が経験してきた苦労や痛みを誰かがうけていたら、たとえそれがどんな相手でも寄り添える人間でありたいと強く思ったよ。
バンドの演奏をみんなで聞くシーンは本当に良かった。
素晴らしい作品です。