千年女優

過去のない男の千年女優のレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
3.5
列車でフィンランドはヘルシンキに訪れて夜の公演でひと眠りをしていたところを三人組の暴漢に襲われ、身ぐるみはがされた上に病院で目が覚めると記憶を失っていた男。病院を出て朦朧としているところをコンテナに住む一家に救われて救世軍の事務所で仕事を得た彼が、そこに所属する女性下士官イルマと育む愛を描いたドラマ映画です。

フィンランドを代表する映画監督で兄と共に設立した映画会社の制作で脚本から編集まで手掛けるアキ・カウリスマキ監督が、1996年の『浮き雲』から始まる「敗者三部作」の第二弾で、カリ・ヴァーナネン演じる男を三部作に連続して出演するカティ・オウティネンが支える物語が称賛されてカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得しました。

後の作品でも繰り返し使われる不遇な主人公が新たな一歩を踏む物語をユーモアを交えて描くカウリスマキ節の代表作で、感情移入しすぎない映像と語り口は一見すると淡泊ながらしっかりと周囲のキャラを通して手が差し伸べられます。後により洗練されていくスタイルの礎を築いていて、ひいきにする日本文化からの味付けも和む一作です。
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