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三本指の男の3104のレビュー・感想・評価

三本指の男(1947年製作の映画)
3.0
観た後に横溝ファンの方が憤慨されていたので、原作にあたる『本陣殺人事件』を読んでみた。なるほど憤るのも無理からぬ。今風の言葉を使うと“改悪”というやつだこれは。映像化にあたり原典にアレンジを加えるのはよくあることだが、それにより肝やエッセンス、何より情緒を台無しにしてしまってはいけない。

それでも序盤~途中までは原作に近い形で進む。しかしタイトルにもある「三本指の男」の扱いと、何よりミステリィの根幹に関わる「動機」「密室殺人のトリック」の描写が酷い。

ノックスの十戒にもある通り、秘密の***はさすがにいただけない。後だしジャンケン甚だし。しかもその秘密の***の発見も論理的な推理・考証によるものではなくただの思いつきに助けられたような感じなのだから余計にタチが悪い。

かのように作品の構造に難あれど、他に見どころはいくつか。
片岡千恵蔵の金田一は悪くはない。例えば石坂浩二や古谷一行のように金田一耕助といえば和装というかくたびれた書生風でボサボサの髪のイメージが強いが、ここでは髪をキッチリまとめてスーツ姿を決め込んでいる。飄々とした感じで決して吃ることもなく、言ってみれば「戦前のスター」然とした佇まいなのだがこれはこれで作品にマッチしているともいえる。
原作ではさして活躍しない白木静子役に原節子。丸眼鏡姿が凛々しくそして素敵だ。外せば「きっと美人」(作中のセリフより)なのだが、話や事件の展開とは別に、彼女の貴重な眼鏡姿をもっと観ていたい気分にさせる。
他に妙に老け役設定の杉村春子や磯川警部役に宮口精二などが出演。

珍品を観た、という解釈で(作品のトンデモぶりを)納得するのがベターか。
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