むっしゅたいやき

コルチャック先生のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

コルチャック先生(1990年製作の映画)
3.8
アンジェイ・ヴァイダ監督作品。
第二次大戦中、200名のユダヤ人孤児の救済を行い、後にはトレブリンカ強制収容所にてホロコーストの犠牲となった実在の医師、ヤヌシュ・コルチャックを描いた作品です。

大変重いテーマの作品では有りますが、単によく在る『ナチスが悪い』だけの作品では無く、ゲットー内でのユダヤ人の拝金主義、利己主義、そして人間の弱さにも批判の目を向けたヴァイダらしい作品でした。

ストーリーは実話ベースであり、且つ伝記的な作品である為、割愛します。

その内容自体には異論は無いのですが、「如何に彼が200名の孤児を守る為奔走したか」に時間を割き過ぎており、「如何に彼が孤児達を愛したか」又は「如何に彼が逡巡したか」「如何に彼等の生活が、恐怖により脅かされたか」と言った点の描写が疎かになっていて、冗長さが私には気になりました。

また、交渉や決断に至るその逡巡の無さが彼を英雄扱いにする一方、逆に人間らしさが損なわれており、終始一本調子な正論を押し付けられている様にも感じます。
所謂批判すら許されない『結末有りきの英雄的な人物像』である様に感じられたのが残念でした。

この為、彼の事跡云々では無く映画として、少々評価は下げています。

ラストシーンはかなりソフトな印象ですが、今からそう遠くない過去、現実に彼等を見舞った苛烈で過酷過ぎる事実を思う時、せめて作中の様に、裸足で嬌声を挙げて駆け出した無邪気さを保ったまま―、と願います。
主題として大変重く、含蓄のある作品でした。
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