とり

ネバーエンディング・ストーリーのとりのレビュー・感想・評価

4.5
ファンタジー映画の元祖、といった趣の本映画。
今でこそ技術が発達して、信じられない空想の世界が違和感なく映像として再現される時代ですが、ネバーエンディングストーリーが公開された当時はまだまだ創意工夫、お手製感モリモリでした。
しかもこの映画ドイツ生まれなので、ハリウッド臭くなくてそこがまたいいんです。
ファンタジーといえばやはりヨーロッパ。
古い歴史の中で培われてきた土着の精神がこの素敵な映画を生み出したのだと思います。

原作はドイツのミヒャエル・エンデ。
人物についてはあまりにも有名なので割愛。
原作者を含め熱烈なファンはこの映画をよく思っていない向きもあるようです。
理由は重要なテーマを履き違えてるってな感じでしょうか。
映画と原作では結末がまったくの別物。別にいいんじゃないですかね、原作から独り歩きしてしまった映画だと思えば。
私自身、原作を夢中で読んで育った一人。生涯ベストのうちの一冊でもあります。

本当に素晴らしい映画です。
監督の手腕や趣向を凝らした特撮はもちろんですが、主要人物3人の子役の奇跡といっていいほどの神がかった演技。
いい表情してます、みんな。大人になってから観ると、この子役達にせつなさや懐かしさを覚えるのではないでしょうか。
誰しもが持っていた幼い頃の純粋な心に触れることができます。

ちなみにこの映画を語る時に欠かせないのが、ファンタージエンの少年戦士アトレーユ。わずか10代前半?の男の子なのに、なんなのですかこの美しさは。少女マンガのかっこいい男の子も霞んでしまうレベル。
確かこの少年ノア・ハサウェイ君は製作スタッフの誰かのお子さんだったような気が。奇跡ですね。
そしてもう一人の少年、現実世界のいじめられっ子・本の虫バスチアン。
こっちはアトレーユに比べてあまりにも地味でした。庶民代表ですね。親しみが持てます。

最後の子役、紅一点。ファンタージエンの女王様「幼心の君」は少ない出番ながら強烈な印象。
ちょいと厚化粧が気にならなくもないけど、すごく不思議な魅力に溢れています。
思いっきりカメラ目線でうったえかける様など、釘付け演技ものですよ。
慈愛に満ちたあの見事な表情はアカデミー賞取れてもおかしくない。

そして忘れちゃならないのがファルコン!
犬?いやいやとっても気のいいドラゴンですが、造形が良すぎです。
フカフカ具合がもう、くぅーーーー!!って感じ。
耳の後ろがカユイカユイってアトレーユにカキカキしてもらうシーンがとっても好きです。なごむ…。

今時のCGバリバリ全開の超大作映画しか知らないような若者には、ちょっと陳腐で退屈な類の映画かもしれませんが⋯っていうか、そう思われたら悲しいなぁ。
子供の頃に初めて見たのでトラウマ級のシーンがいくつもあります。スフィンクスの門、絶望する馬など、いつまでも忘れられません。いい映画の証。
音楽も良いですよ。当時大ヒットしました。リマール。
冒頭このテーマソングとともに怪しげな雲<虚無>が渦巻くシーン。
こことっても大好きなんですが、デトロイトかどこかの光化学スモッグを加工した映像だというから驚きです。

3作目まで存在してますがおそらく一生観ないと思います。一作目の大切な何かが損なわれてしまうのが怖い。
エンデとしては原作の途中で終わった一作目の続きなので満足できたのでしょうかね?
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