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クローンの一人旅のレビュー・感想・評価

クローン(2001年製作の映画)
2.0
ゲイリー・フレダー監督作。

人間と異星人の戦争が続く西暦2079年を舞台に、クローン認定された男の逃亡劇を描いた近未来SFスリラー。

フィリップ・K・ディックの短編小説を、『サウンド・オブ・サイレンス』(2001)『ニューオーリンズ・トライアル』(2003)のゲイリー・フレダー監督が映画化した作品。「人間を殺してクローンを生成する」という異星人の陰謀が明らかになる中、保安局によりクローン認定されてしまった科学者スペンサーが当局の追跡を逃れながら、自身が本物のスペンサーであることを証明すべく鍵となる病院を目指す…という“クローン認定された男の逃亡劇”を描き出す。“人間が入れ替わる”という設定は『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956)やそのリメイク『SF/ボディ・スナッチャー』(1978)と同じ発想。ただ、『ボディ~』では主人公の周辺の人間が本物なのか複製なのかで生まれる疑心暗鬼的恐怖が見所だったのだが、本作では政府により“自分自身”がクローン認定されてしまった男の内面的な闘いと葛藤が描かれる。

ユニークな設定のSF作品だが、残念なことに演出が低レベル。目まぐるしく画面が揺れ動く・切り替わる落ち着きのない演出が単純に見づらい上に、人間VS異星人の空中戦は往年のテレビゲーム的で映像レベルも低い。さらに、スペンサーを追う保安局のハサウェイ少佐が笑えるくらいの無能っぷり。クローンと間違えて無実の人間を何人も殺害したというアホなこぼれ話からして笑えるのだが、その後のスペンサー捕獲作戦でも偉そうに振る舞うだけで全く役に立たない。すれ違いざまにポケットに発信機を入れられた結果、その場にいるはずのないスペンサーを意味もなく探し回る姿が滑稽。肝心な暗号解読にも失敗するし…。

何かと惜しい作品だが、キャスティングは一流揃い。主人公スペンサーはゲイリー・シニーズ、ハサウェイ少佐はヴィンセント・ドノフリオ。そして、スペンサーの最愛の妻マヤをマデリーン・ストーが演じる。マデリーン・ストーは本当に美人だと思える数少ないハリウッド女優のひとり。もはや最近は映画から引退したようなもので寂しいのだが、『チャイナ・ムーン』(1994)の魔性の美貌が未だ脳裏に焼き付いて離れません。
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