オルキリア元ちきーた

フォーリング・ダウンのオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
3.4
ひと月前に会社をクビになった男が
離婚した妻の元へ車を走らせる。
しかし猛暑の中、車は工事渋滞に巻き込まれ、全く進む気配が無い。
苛々の頂点に達した男は車を放置して歩いて妻の元へ向かう。
愛する娘の誕生日を祝うために。

しかしそこは、人種の坩堝であるロサンゼルス。
韓国人の店主にボられそうになったり
…護身用バットを持ち帰ったり
ヒスパニックのチンピラに絡まれたり
…脅されたバタフライナイフを入手したり
白人至上主義者に同類に見られたり
…秘蔵のバズーカ砲をゲットしたり

ただの無職のバツイチリーマンが
理想の家族を再建したいだけの筈が
ヤバい「無敵の男」に進化していく。

そこには
人種差別や
職場を失った人間の悲壮感や
離婚率の高さや
夫のパワハラに悩む妻の姿や
ストーカーまがいの危険人物に対する警戒の甘さなど
社会のあらゆる「膿」が濃縮されている。

ジワジワと漂う「社会のイライラ」と
ジリジリと焦る「家庭のイライラ」が
最悪の組み合わせ方でハマってしまった
パズルのピースの様に画面に展開されていく。

1993年の作品。

1976年のタクシードライバー然り
2019年のジョーカー然り
鬱屈が溜まって溢れ出してしまう奴は
誰にも止められない凶器になり得る、と
映画はいつも世の中に警告している。