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トレインスポッティングのYYamadaのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
3.9
【連続鑑賞のススメ】
 トレインスポッティング①
◆連続鑑賞の理由
・20年ぶりの続編、連続鑑賞しないと
 思い出せない
・スター俳優とアカデミー監督の
 原点と現在を比較鑑賞したい

〈見処〉
①斬新な映像で若者の生々しい生活を
 描く、90'sポップ・カルチャー象徴作
・『トレインスポッティング』は、1993年に出版されたアーヴィン・ウェルシュの同名小説を原作にした、1996年製作のイギリス映画。
・「トレインスポッティング」は、本来「鉄道愛好家」を指すが、本作の舞台となるスコットランド地方のエジンバラでは、ドラッグ中毒者が使われなくなった鉄道操車場を溜まり場としていたことから「ドラッグ中毒者」を差す隠語でもある。
・スコットランド、エディンバラで暮らすヘロイン中毒の若者レントンは、友人のシック・ボーイやスパッド、暴力的なベグビーらと無軌道な毎日を送っていた。
・そんなある日、レントンは万引きで逮捕されてしまい更生を決意。ロンドンにて就職するが、強盗で逃亡中のベグビーとシック・ボーイの押しかけを受け、会社をクビになってしまう。
・地元へ帰った彼らを待っていたのは、ドラッグに手を出した友人トミーの葬式。圧倒的な絶望感のなか、大きな賭けに出るレントンたちだったが…。(eiga.comより抜粋)
・本作は「冷戦の終結と湾岸戦争」「EUの設立合意」「エイズの猛威」…時代の変わり目にあった90年代中盤にてドラッグに溺れる若者たちの退廃的な青春を描き、イギリスのポップカルチャーを象徴する作品となった青春映画。

②出世作として
以下の2人は本作にて世界に羽ばたくことになるが、現在においても、彼らの代表作である。
◆ダニー・ボイル
・1996年公開の本作で監督を務めたダニー・ボイルは、当時40歳。監督2作目の本作がイギリス映画史上最も興行収入をあげた作品のひとつとなり、停滞期にあったイギリス映画復活のきっかけとなる。
・翌1997年には、ユアン・マクレガーと共にハリウッドに進出し、迷作『普通じゃない』を演出。
・以降しばらくの期間は「当たり外れの大きい監督」として活動を続けていたが、ボイルが52歳のときに演出した『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)にてアカデミー監督賞/作品賞などの詳細レースを総ナメ。
・次作『127時間』(2010)も再びアカデミー数部門にてノミネートされるなど、イギリスNo.1監督の評価を欲しいままとし、2012年ロンドンオリンピックでは、開会式の芸術監督としてジェームズ・ボンドとエリザベス女王の「共演」を演出している。

◆ユアン・マクレガー
・映画出演3作目となった本作にて、マクレガーは映画初出演。当時25歳、肩までの長髪を切り、スキンヘッドでジャンキー役に臨んだが、本作は若者たちの支持を受け、マクレガーはイギリスの映画賞を総なめする。
・その成功により、本作公開3年後に製作された『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)にて、オビ=ワン・ケノービ役に抜擢。誰もが認知する世界的なスターとなった。

③社会格差の根本は?
・作中のレントン(ユアン・マクレガー)の台詞「馬鹿なイギリス人に占領されてる」からスコットランド人の被害者意識が見てとれるが、他の「非イングランド系」イギリス映画のほぼ全てにて、万年不況による、地域格差をテーマにしている。
・本作にて明るい雰囲気で描写されるのは冒頭5分を除くと、ロンドン市中にて生活をしていたシーンのみ。
・本作による、死ぬまで脱出出来そうもない社会格差や彼らが反社会的な行動を取らざるを得ない根本要因は、地域格差にある。

④結び…本作の見処は?
○: 非常にスタイリッシュなダニー・ボイルの演出は、20年代以上たった今見ても色褪せず、映画演出の教科書に出来る。
○: ドラッグ、セックス、強盗、子育て放棄…作中の若者達の行動には全く共感しないが、彼らが快楽に走る行動原理が理解出来る。
▲: 明るく振る舞う若者達であるが、彼らにも、鑑賞者にも救いがなく、憂鬱な内容。
▲: とにかく汚いシーンが多く、潔癖症の方にとって、作中の「スコットランド最悪のトイレ」は失神レベル。
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