ベビーパウダー山崎

真夜中の青春のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

真夜中の青春(1970年製作の映画)
4.5
だからさ、頭でっかちで口ばっかり達者になったけど、結局は親に甘えているだけで責任も取らずにダラダラしているお前はこれからどう(正しく)生きていくの?という問いに背を向け、逃げ続けた大金持ちのクズがスラム街に住む黒人の子供たちの「私は私であるという誇り(黒人であることのプライド)」を目の当たりにして、ようやく空っぽだった己と向き合い始める。自分が何者でもないことを受け入れ、それでもいまやるべきことをやろうとしている姿に、薄っぺらな理想や綺麗事で動いていたボー・ブリッジス(100点のボンクラ面)がはじめて感情に正直になり愛する人の元へ車を走らせる終盤にグッときて泣いてしまった。
スカッシュふくめて白で統一された富裕層と貧困層の黒。中心人物の成長はガス・ヴァン・サント映画とよく似ている(『永遠の僕たち』は『ハロルドとモード』とほぼ同じだし、ヴァン・サントは影響を受けていると思う)。終盤のバスルームでブリッジスが激高するシーンは『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のグウィネス・パルトローがバスルームに閉じこもるくだりを勝手に想起してしまったが、ハル・アシュビー大好きなウェス・アンダーソンならその可能性もなくはないと思う。いつか劇場(スクリーン)で見ることができればと思っていた素晴らしい作品を大勢の観客と楽しむことができた至福の時間。中原昌也氏には最大級の感謝を。