Kota

大人は判ってくれないのKotaのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
3.5
“お前はいつかやると思ってた。”

巨匠フランソワ・トリュフォー監督の長編デビュー作。12歳の少年目線で、愛情の感じられない親や教師を映し出し、その反動として盗みなどの非行に走っていく様を瑞々しく描く。監督はこの頃から少年の無邪気さを表現するのが驚くほど上手い。

モノクロにより表情の影や街並みの濃淡がハッキリ見えるまさにフィルム・ノワールのお手本。手がつけられない教室を正面からワイドショットでただ映すところと、最後の少年がただ走るだけのシーンに言葉では表現できないメッセージが含まれていて映画的体験が凄かったなぁ。劇中一回だけある幸せな家族の映画のシーンは皮肉にもめちゃくちゃ楽しそうに撮られていて、“愛がない”とかそんな通り一変の言葉では語りきれない人間の奥深さを感じた。ゴミをちゃんと捨てに行ったり、調書を受けている少年の回答に見える純粋さは、それまでのすべての行いを覆い被せるほどの破壊力。白黒つけることの出来ないリアルな日々。
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