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東京の女のEyesworthのレビュー・感想・評価

東京の女(1933年製作の映画)
4.2
【良ちゃんの弱虫!】

小津安二郎監督のサイレント作品。1933年の映画で、急遽製作を始め、9日間で撮りあげた47分間の短い作品。

〈あらすじ〉
学生の良一(江川宇礼雄)は、姉のちか子(岡田嘉子)との二人暮らしで、良一の学費はちか子が支え、昼は会社に勤務し、退社後は大学で翻訳の手伝いをしていると聞かされていた。ある日、ちか子の会社に警察が現れ、人事担当者からちか子のことを調べていきます。その頃、良一は恋人の春江(田中絹代)とデートを楽しんでいた。ところが、ある夜春江は警察に努める兄(奈良真養)から、ちか子が退社後に水商売の店で働いているという噂を聞かされた。それを春江から聞いた良一は、帰宅した姉ちか子を問い詰める。ちか子は良一が無事に卒業できることだけを願っていると話すが、良一は納得できず、ちか子を何度も殴って家を出ていく。そして良一は自殺してしまう…。

〈所感〉
小津安二郎監督入門にこちらの短い作品を鑑賞。内容は殆ど皆無だが、当時の風俗が色濃くカメラに映されており、細かな描写から当時のどうにもならない逼迫感が伝わってくる。小津安二郎監督はトーキー全盛の時代に向かおうとする潮流に抗うように画だけで音を表現する技術に長けていたのだろう。姉の言うように「あんなことで死んでしまうなんて…良ちゃんの弱虫!」がすべてを物語っている。本当にあんなことで死ぬ人間がいるのか?と思ったが、昔の日本人は今と比べて段違いに高尚なモラル(観念)を持っていたのだと思う。身内が水商売していて、警察にも疑われては、身を立てる術も無かったのだろう。噂が簡単に人を殺す。現代でも同じ。安易な吹き込み、書き込みはいけない。
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