櫻イミト

世界の心の櫻イミトのレビュー・感想・評価

世界の心(1918年製作の映画)
3.0
「イントレランス」(1916)が興行的に大惨敗し無一文になったグリフィス監督が、イギリス首相からの依頼で撮った連合国側プロパガンダ映画。

フランスの田舎町に隣り合って住むアメリカ人の2つの家族。それぞれの娘(リリアン)と息子は愛し合い婚約する。しかし第一次大戦が勃発し息子は出征。残されたリリアンと家族たちは爆撃とドイツ人の占拠に恐れおののく。。。

映画の冒頭、グリフィス監督は自身が写ったニュースフィルムを付け加えた。「この短いプロローグから始めることをお許しいただきたい。米国の映画人が実際の戦場で撮影を許可されたという極めて稀な事実を伝えるために他ならない」「グリフィスは英国軍の前線にキャメラを据える。敵軍からわずか45mの塹壕である」~ヘルメットをかぶって撮影中のグリフィスの画~「英国首相ロイド・ジョージが映画の成功を祈ってグリフィス監督を激励する」~力強く笑顔で握手する二人の姿~。

本編の序盤はリリアン・ギッシュの恋物語にドロシー・ギッシュの横恋慕を交えて、平和な日々をほのぼのと描く。それが戦争勃発と共に大きな落差をつけて悲惨描写に変わっていく。父親は胴体真っ二つになり、母親は部屋の床下に土葬される。敵軍憎し!・・・という戦意高揚プロパガンダ映画であり他の何物でもない。本作がタイトルに掲げる「世界」=「連合国」であり、最後はラスト・ミニッツ・レスキューを用いて連合国を称賛して終幕する。

本作はアメリカの参戦直後のタイミングに公開され興行的に大成功を収めた。

ギッシュ姉妹の共演作の中でも、妹ドロシーがコメディエンヌぶりを発揮しているのが見所か。グリフィス監督の研究視点的には「イントレランス」と「散り行く花」(1919)の間の作品として興味深い。

※日本語映画サイトではキャストにシュトロハイムの名が列挙されているが、実際は助監督参加で数カットだけエキストラ出演しているだけ。
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