ゴト

トリコロール/赤の愛のゴトのレビュー・感想・評価

トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)
4.3
決して表に出ることのない罪の意識を感じる時というのがたまにある。

上手くは言えないが、法に触れたわけではないけれど、ほんの少し悪意というか後ろ暗い気持ちが芽生えた瞬間であるとか。そして、表に出ないという妙な安心感がいつしか罪悪感にすり替わるのだ。

過去の判決と盗聴、表に出ないという共通項を持つ二つの出来事がとても鋭くリンクしていて、映画としてのレベルが高い。それだけでなく、元判事の男とオーギュスト、父親の秘密の電話を一階の受話器から盗み聞く娘、そしてバランティーヌの弟と多重構造のような映画の造りが流石という感じ。

そして作品のテーマでもある「博愛」。個人的には「赦し」にも置き換えれるのでは、と思った。表に出ることのない自身の罪の意識に気づいてくれる存在にようやく出会えたからこそ、元判事の男は自分で自分を密告したのだと思う。

盗聴に手を染める元判事がそれをラジオを楽しむように聞いているのに対して、バランティーヌの彼氏が電話の度に盗聴でもするかのように彼女の周囲の音に敏感に反応しているというのも面白かった。

光と影の強いコントラストが、そのまま二人を表しているようでもある。
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