Mikiyoshi1986

バルタザールどこへ行くのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)
4.3
追悼アンヌ・ヴィアゼムスキー

アンナ・カリーナに代わるゴダール第2のミューズとして左傾化時代の彼を支えたアンヌ・ヴィアゼムスキー、享年70歳。
心よりご冥福をお祈りいたします。

彼女の出演作の中でも一番印象的なのがロベール・ブレッソン監督の傑作シネマトグラフ「バルタザールどこへ行く」

常に不安気な瞳とゆるい口元の少女マリーを当時17歳でデビューしたアンヌが演じ、マリーの名の通り聖母マリアの慈悲深さを持ってロバのバルタザールと共に不運に見舞われる人生を辿ってゆきます。

キリストの受難とドストエフスキー著「白痴」のムイシュキン公爵をバルタザールの運命と重ね、淡々と綴られてゆく現代寓話。

東方の三博士、洗礼、花輪に見る棘の冠、七つの大罪など聖書のエレメンツを多く組み込み、
純粋無垢なる白痴役バルタザールを通して俗世の醜悪と人間の罪悪を一手に背負いながら、この聖なるロバは終焉へと突き進みます。

シューベルトの物悲しいピアノソナタに併せ、それぞれの数奇な運命に人生の営みを映すブレッソンの冷徹な視線。
バルタザールを演じたロバの名演技はとにかく必見です。

最近だけでもジャンヌ・モロー、ミレーユ・ダルク、アンヌ・ヴィアゼムスキー、そして今週はジャン・ロシュフォールの訃報も伝えられ、フランス映画を盛り上げた名優たちが立て続けに亡くなられてゆくのはなんとも寂しい限り。
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