おりょうSNK

富士山頂のおりょうSNKのレビュー・感想・評価

富士山頂(1970年製作の映画)
4.5
渡哲也さん追悼鑑賞②大味ながらも胸熱!

「富士山頂」
1970年日活

「逢いたくて逢いたくて」がとてもよく出来た作品だったので、調子よく2本目です。映画館以外の鑑賞スタイルがほぼU-NEXTのみという状態で、配信ラインナップの中からこれにしました。

■サクッとあらすじ
昭和38年、台風の被害を減らすことを目的として富士山頂にアンテナぶっ立てた男たちの胸熱ストーリー!
高山病に悩まされ、天候に恨まれて、厳しすぎる労働環境から集団離脱もありながらの偉業に万歳です!

めっちゃ70年代っぽい大味な作品ですが、これはそこがいいですね!
なんでも、この時代は台風接近が‪5時‬間前にしか分からなかったのが、このアンテナ作ると‪20時‬間前に分かるようになるという。大型台風がデフォルトになってしまった災害大国日本にとって、重要な災害対策の一つだったんですね。
でも気象庁念願のこの事業、大蔵省の認可が下りるまで3年掛かりだったことが劇中で語られます。

認可が下りて、三菱電機、三菱重工、大成建設、朝日ヘリコプターの4企業と荒くれものたちが協力して巨大な富士山に挑むさまは「シン・ゴジラ」を見てるよう。勝新太郎がブルドーザーで斜面を登っていくシーンなどは、血液凝固剤を投入するポンプ車を思い起こさせ、重機マニア垂涎ではないだろうか。映画にしろドラマにしろ、企業が結束していくものって定番でありながらも熱いものがこみ上げてきますね。山頂の乱気流/タービュランスに負けじと、アンテナを覆う600Kgのドームを釣り上げて設置する場面と、その直後に室戸台風の暴風にさらされる展開はちょっとしたスペクタクルが!

三菱重工の執念の人を演じたのが石原裕次郎で(無理やり盛り上げるようなことはなく、案外淡々とした演技なんですが)、盟友となっていくのが大成建設の山崎努。この時33歳と思えないギラついた表情を見せてくれます。
馬で登ってた勝新太郎が驚く、ブルドーザー富士登山を慣行するのが佐藤允。この2人も盟友になっていく。勝が無駄に意味もなくカッコいい。

そして真の主役は気象庁の課長。演じたのが芦田伸介で、この課長と大蔵省主計官(神山繁が最高にかっこいい)とのやり取りが、どちらもプロ意識の高さが表現されていて凄く面白かった。
調べてみたら、小説では気象庁課長が主役で、作者の新田次郎さんご本人の体験であったとのこと。

あ!渡哲也さんのこと書いてない…
富士山頂に突如吹く乱気流をどうクリアすればいいか分からないチームを横目に、「やれますよ」と爽やかに放つ朝日ヘリコプターの操縦士が渡哲也さん。乱気流が吹くと火口に吸い込まれてしまう、でも剣が峰を越えなければ大丈夫だと事もなげに言い、その言葉でチームが一つになって前身したからこそ、このプロジェクトは成功したと言える。
ほぼ全員が泥々のギトギトのギラギラで何かいろんなスメルがプンプンしてそうな野郎どもの中で、ひとりシーブリーズのような爽やかさを放っていた渡哲也さんでした。

石原裕次郎が富士山での撮影にこだわったそうで、撮影も大変だったろうなと思うシーンの連続で、そこはさながらほぼ「地獄の黙示録」。大味な作風で大げさな演出もしないから感じるしかないけれど、命を賭した撮影と言っても過言ではないと思います。

2本で終わりのつもりだったのですが、あと2本気になる作品が出てきたので、また観ます。
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