なかなかに予想を裏切られる西部劇。後味がすっきりしないが、こんなモヤモヤを味あわせてくれる映画もそんなにない。
最初、列車強盗により取り残されてしまうリンク、ビリー、サム。この3人の掛け合いがゆるいのに対して、悪党一味の隠れ家に着いてからの落差がすごい。どんどん息苦しくなっていく。
勧善懲悪なヒーローではない、過去に闇を抱えた男。悪党たちとの腐れ縁を断ち切りたくても、断ち切れない。そんな展開にもどかしさを感じつつ、ラストは西部劇らしい対決を見せてくれる。
シネスコによるワイドショット、ミディアムショットの組み合わせがうまい。ジョン・フォードのスタンダードサイズの画に比べると締まりのなさを感じてしまうが、前景と後景の奥行きの付け方や、カメラワークにうまさがある。
鮮やかな色合いも印象的だった。
殴り合いシーンでは「ゼイリブ」を、室内の息苦しい会話シーンでは「ヘイトフル・エイト」を、全体通して過去に罪を負った主人公のドラマには「許されざる者」といった作品を思い出しながら観た。
敵を倒しながら、どこか浮かばれない表情のゲイリー・クーパーが記憶に残る。