CureTochan

インクレディブル・ハルクのCureTochanのレビュー・感想・評価

インクレディブル・ハルク(2008年製作の映画)
3.1
ハルクは子供の頃、テレビ放送を観た記憶がある。その魅力は「変身後のハルクの絵的な怖さ」と、「バナーが行く先々で関わる揉め事→ハルクが暴れてスッキリする」という2点に集約される。けっこう小さな問題を解決して去っていく、同じくテレビショーだったイコライザーと同じような話なのだ。バナーを怒らせないと(あるいは脈拍を上げないと)終われないので、どうしても人情噺が必要になる。あと、おとなしい人がキレたら怖いという真実を子供たちは学ぶ。アクションで大切なのは暴れる動機だ。

そういうTVシリーズにあった魅力を全部、捨ててしまったから、ハルクの映画はつまんないし、必殺仕事人の映画もつまんないし、イコライザーはまあまあ成功した。アベンジャーズでは飛び道具的に消費されてしまい、あれはあれでよかったけれど、自分の意志で変身するようになったらシリーズとしては終わり。自分の問題を解決するようになったらヒーローとしても終わり。これでハルクの単独作は作られなくなった。

2003年の映画のほうが、より大きな失敗とされているが、エリック・バナはむしろ良かった。エドワード・ノートンのほうが辛気臭いし、なにより声がしょぼい。ハルクのビジュアルは、どっちも失敗である。怒りの権化なのに、あんな可愛い顔でどうするのか。ほとんど白っぽい緑のカラコンが、怖くてよかったのに。目がすごく痛くなるので、15分しかつけてられなかったそうである。技術がなかった時代の作品に、センスで負けるなんて最悪だ。

こういう話の映画化は、だからイコライザーみたいに小悪党をときどき成敗するエピソードを挟むしかないが、あの変身を何度も見せられてもアレなんで、確かに難しい。そこへもってきて、この映画は最後のバトルにドラマがないことが決定的だった。自殺しても死ねないほど強いので、悲壮感がない。「変身したら彼女と会えなくなるが、変身しないと目の前の人が見殺しになる」といったスパイディ的なドラマもない。だからあとは、敵が本当に見ててイライラするほどの悪者だったなら、ハルクがブチ殺して爽快という終わりにできただろう。スパイダーマン2でもブチギレて、ピーターは能力が復活した。ラブストーリーとか、いらないんだよね〜
CureTochan

CureTochan