このレビューはネタバレを含みます
わたしはジャンヌ・ダルクには指導者かつ巫女かつ戦術家であってほしいんだなあ、などと思った。夢を見ている。同時に、革命家は救世主にはなれない、ひとたび平和が訪れたら身を引かねばならない。そこは、夢見てない。神の使者だったとも思ってない。
何も知らない小娘が戦場に出て、突然、神がかり的強さを発揮する…神の加護があるから…より、自分で知恵を絞り、自分が編み出した戦術を、神がこう言ってる、だから私を信じろ、と人々に語り、騙るような、強かで頭の良い女性像が理想なんだと思った。
でも、これ女の成長譚でもあるよね…間違えちゃったけど…虐げられた女の怒りの話じゃん…ヒステリックに喚き散らす様子には辟易したけど…凛々しくなっていく姿は…うん、かっこよかった…神にすがるしかなかった女…痛々しく愚か…確かに彼女は利己的で頑固で…理想と現実の矛盾に負けちゃったけど…でも罪を認めた…なのに救われないなんて…
字が読めなくて書けなくてXと名乗ってたことがわかったくだりとか…服を破かれ…辛すぎる…悲しすぎる…
王太子を見つけて、あなたこそが王だ、と跪くくだりなど、痺れてしまった…んだけど、最初から、絶妙に、頭のおかしい、魔女にも見えるように描写されてて…後半に効いてくる…
若い娘が処女かどうかチェックされる時代の醜悪さ…ジャンヌを警戒する王妃の姿…教会の権力…
神のお告げ〜云々は、最初から最後まで少女の内なる声の比喩として見てた、でも、神の声は私の声、私の声は神の声と言ってしまった時点で、彼女は巫女ではなくなる。なんともなあ…歯がゆい。そして、ひたすら、現実を突きつけてくる。そう、神などいない…
キリスト教徒だと、また色々と思うところあるんだろうなと思うけど…
ジル・ドレが!かっこいい!!
屈強だけど、斜に構えて臆病風に吹かれ、のらりくらりしている男たちが、彼女に感化されていく姿とか…これはいわゆる萌えだと思う…良い…
火薬のない時代の戦闘って泥臭い人海戦術なとこがいいよね…
血の惨劇をきっちり描く…大義の元に傷付く人々…そう、現実と向き合え、ジャンヌ、これが戦争だ…聖女であれなかったジャンヌ…
でも全面戦争は回避…少女の涙が心を動かしたってか…あの奇跡はちょっと納得いかなかった…
ジャンヌ…闘う姿は苛烈すぎて、平和な世では煙たがられて恐れられるのもわかる…悲しいけど…
ジャンヌの物語って、決して、女は救世主になれないって話じゃなくて、戦争が終わって平和になったら革命家は必要なくなる、ってことだと思う…
瀕死から復活したけど、キリストみたいな救世主にはなれなかった…だって血を流したから…
でもまあ、処刑されて終わりじゃないジャンヌも見たい…だって神がいるなら、父なる神よ、少女をそそのかしておいて、見捨てるなんて、残酷すぎねえか…
教会批判もしっかり含まれてて…でもそれに終わらなくて…すごくよく考えられた脚本だと思ったよ…
今後、新たなジャンヌ映画が作られることに期待…今のハリウッドならきっとやってくれるはず…いろんな解釈が見たい…